電話に“イラッ” 作家・黒川博行がテレビレポーターに言いたいこと (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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電話に“イラッ” 作家・黒川博行がテレビレポーターに言いたいこと

連載「出たとこ勝負」

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黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

※画像はイメージです (Getty Images)

※画像はイメージです (Getty Images)

 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。初回のテーマは「正しい日本語」。

*  *  *
 某日、電話がかかってきた。わたしは電話が嫌いだから、コール音が鳴っても、いちいち立ってまで受話器をとることはしないが、そのときは原稿を書いていた。電話は机のそばにおいている。

 ──はい。
 ──あっ、黒川さんのお宅でよろしかったでしょうか。
 ──そうです。
 ──あっ、わたし、○○証券の△△と申しますが、このたび担当が代わりまして、新任のご挨拶にお伺いしたいと、上司のほうと相談いたしまして、お時間のほう、いただけませんでしょうか。
 ──わざわざ、挨拶してもらわんでもいいです。
 ──あっ、前任の××もしばらくセンセイとはお会いしてないようなので、ぜひ、お時間のほうをいただきたいと申しております。
 ──△△さんと××さんが来られるんですか。
 ──あっ、いえ、わたしひとりになります。

 もうこのあたりで、わたしはイラッとしていた。この男が“あっ”というたびに気分がわるくなる。まともな日本語でものをいえない人間とは会いたくない。

 ──お断りします。
 ──あっ、ご都合がわるいのでしょうか。
 ──あのね、その“あっ”というのをやめてくれんですか。ぼくはいちいち、あなたをびっくりさせてるわけやないんです。
 ──あっ、失礼しました。
 ──それと“ほう・ほう”というのは、ファミレスやコンビニのビジネス言語であって、一部上場企業の社員が使うべきではないと思います。

“よろしかった”と“~になります”もやめろ、とまではいわなかった。それらがいかに下品でまちがった言葉であるかを、本人は理解していないだろうし、上司からそういう言葉遣い(とりあえず“ほう”をつけといたらええんや)をしろと教唆されている可能性もなくはない。

 わたしは以前から思っているのだが、営業を伴う企業において、社員教育の一カリキュラムとして『正しい日本語』をなぜ教えないのだろうか──。


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