例えばお茶の水女子大学は、ペーパーテスト中心の一般入試に加え、2017年度入試から新型のAO入試「新フンボルト入試」を実施しています。筆記試験はなく、調査書などを提出したうえで、1次選考と2次選考にそれぞれ2日間かけます。1次選考は、大学の授業を体験するプレゼミナールを受講し、レポートを作成。2次選考は、文系は付属図書館の図書を使ったレポート作成やグループ討論、面接、理系は実験や実験演示、データ分析、自主研究のポスター発表などを行っています。手間ひまかかりますが、課題を見つける視点と、課題解決に取り組む過程を評価する方式で、本当の意味での学力を見る試験だと感心しています。

 大学がそれぞれの方針で入試改革を進めれば、大学入試は多様化していきます。「われわれはこういう大学だ。だからこういう学生に来てほしい」、そういうメッセージが入試方法には込められています。大学選びは、自分に合った入試方法を選ぶことから始まると言ってもいいでしょう。

 大学は入ることが目的ではなく、入ってから何をどう学ぶかが大事です。受験生には、ペーパーテストの勉強ばかりではなく、さまざまな本を読み、人生や社会について考える時間も持ってほしいと思いますね。

週刊朝日  2019年5月17日号

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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