室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
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 作家・室井佑月氏は、メディアは弱い人たちのために、正しいことを伝えてほしいと訴える。

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 自民党の萩生田光一幹事長代行が、4月18日にネット番組に出演し、

「景気はちょっと落ちている。6月の日銀短観でこの先は危ないと見えてきたら、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかない」

 と語ったそうだ。つまり、10月予定の消費税率10%への引き上げを延期することもありうる、といったわけ。

 7月には参議院選挙があるからな。またまた安倍政権は『消費税増税を延期する決断を、支持するかしないか』というごまかしを、国民にしかけるってわけだ。

 だって、国会で野党が、「今の国民生活を鑑みれば消費税を上げるのは無理だろ」といってたのに、与党側は「なにいってんだ景気は良いんだ」といい、突っぱねてきた。景気がよく見えるよう、統計まででっちあげたのかもしれない。

 政府が消費税増税を延期すると決めたなら、まずうちらに謝らなきゃダメだろう。今まで間違ったことを話していましたって。無駄に税金(国会を開くにも税金がかかる)を使ってすいませんって。(狙ってか狙ってないかは定かじゃないが)騙すみたいなことになって、申し訳ないって。

 でも絶対にそういわないし、騙される人はいる。騙される人は何度でも騙される。以前のこの“詐欺”は、メディアが片棒担いだし。

 これってメディアがオレオレ詐欺に加担しているようなもんだ。オレオレ詐欺はメディアが撲滅キャンペーンを張って、被害が少なくなってきていると聞いた。やればできるのに。

 国会の予算審議の映像を流すだけでいい。消費税増税を一生懸命反対していた野党、それをのらりくらりかわしていた与党の姿を流せばいい。間違っても以前のときのように、「安倍首相が消費税増税を延期してくれた。ありがたや」ってな演出するな。

 この国には、未だに仮設住宅などでの暮らしを強いられている人は7万人以上いる。この国の子どもの7人に1人が貧困だといわれている。ひとり親世帯になると2人に1人だ。メディアの人間は、この国のこういった現状を知らないわけがないだろう。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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