二つ目の不動産価格下落のリスクは、契約期間中に担保となる不動産価値が下落し、担保割れが発生するケースである。リバースモーゲージは、不動産価格の上昇が予想される局面では利用しやすい。これに対し、不動産価格が下落する局面では、利用者、金融機関の双方にとってリスクがあるので注意が必要だ。

 三つ目のリスクは、金利の上昇。契約期間中に金利が予想以上に上昇すれば、借入残高が増え、担保割れを引き起こす。リバースモーゲージ商品の多くは、「短期プライムレート」を基準とする変動金利を用いている。一般の住宅ローンは金利が上昇しても元本と利息を調整して、月々の返済額を一定期間は上げない仕組みがあるが、リバースモーゲージの多くの場合は、金利が上がれば、利息返済額の増加として跳ね返る。

 担保割れにより、元本の一部返済を求められるケースもある。死亡後に担保を売却しても、完済できない場合は、相続人が請求される商品もあるので要注意だ。

 自宅を活用した資金調達のもう一つの方法としては、「リースバック」がある。自宅などの不動産を専門の不動産会社へ売却し、買い主であるオーナーに対して家賃を支払う形で、引き続き同じ不動産を利用する方法だ。このサービスも、市場が拡大している。

 リバースモーゲージに比べて、老後資金として調達できる金額が多くなりやすいのが利点だ。しかし、毎月の支払額が家賃となり、リバースモーゲージの利息よりも高くなりやすい傾向もある。

 単純に家を売却して老後資金を捻出し、引っ越してしまう方法とどっちが得なのかを見極める必要がある。リースバックのメリットとして、「買い主を探す必要がないので現金化までの期間が比較的短い」「家を売却したことを近所に知られにくい」「将来的に買い戻すことも可能」などが考えられる。つまり、住み替える必要がなく、これまでと同じ生活が続けられるということが最大のメリットだ。一方、前出のニッセイ基礎研究所の高岡主任研究員はこう警告する。

「リバースモーゲージやリースバックなど、所有する住宅資産を活用した老後資金の確保は、自宅以外にも十分な資産を持った富裕層には有効だが、老後資金を準備できない世帯が活用するにはリスクも大きく、過度な期待は禁物。人生100年時代と言っても、全員が100歳まで生きるわけではないので、適切な金融商品の選択が重要になる」

(ライター・小島清利)

週刊朝日  2019年4月26日号