もうひとり、注目したいのが土屋昌巳の参加だ。元一風堂で、プロデューサー、セッション・プレイヤーとして活躍してきた。ジョージ・ハリソンをこよなく愛すヴァーサタイルなギタリストだ。スモーキー・メディスン以来の金子のファンで、10年ほど前から金子のサポートをしてきたことから、参加を請われたという。

 かつて金子が“下北沢のジャニス”と評されたのは、早くからR&B/ソウル・ミュージックに親しみ、ワイルドでパンチの利いたシャウトを聴かせていたから。当時はまれなスタイルだった。ディープなソウル・バラードもこなし、ロック、ファンク、フュージョン、AORなど多彩な音楽に取り組んできた。

 本作の幕開けは、「The Haze And Tide」。金子の落ち着いたアルト・ヴォイスによるスローなアカペラで始まる。重量感のある鳴瀬のベース、難波のシンセが加わり、土屋のサイケ・ギターが渦巻くヘヴィーなサウンドが絡み、金子の呪術的な歌唱が幻惑的な雰囲気を醸す。

 続く「幸せの足音」は玲里と難波の共作。ゴスペル風のサザン・ソウルやザ・バンドにも通じるルーツ・ロック的なサウンドだ。土屋のロビー・ロバートソン風のギターが光る。玲里、開発のゴスペル風コーラスをバックに金子は実直で誠実な歌唱を披露している。

「Forever Young」は70年代に流行したディスコ・スタイルにAORテイストを混ぜたリズミカルでダンサブルな曲。歌詞にも当時流行したフレーズが織り込まれている。難波のアープ・シンセによるらしいソロも懐かしい音。金子の生き生きとした歌唱には、年輪を重ねた余裕、ゆとりが感じられる。

「When You Grow Up~2019~」では、イントロのサックスがマーヴィン・ゲイのヒット曲を思わせる。カシオペアの曲に玲里が歌詞をつけた。親しみあふれるメロディーに、金子の甘い歌声が乗る。

「Tic Tac Toe」は、9マスを〇や×で埋めるゲームと恋愛の駆け引きを重ね合わせた曲。スロー・ファンク・ナンバーで、難波のジャジーなピアノ、土屋の官能的なギターがフィーチャーされる。

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復活ライヴでの熱気や興奮に刺激されて作詞、作曲したのは…