冒頭の出雲大社の千家宮司は本誌にこう話した。

「吉村会長と昨年お会いして、4年前に北海道札幌市の石山神社を再建した話をお聞きしました。『毎年1社、奉納させていただきたい』という申し出を受けたので、昨年は本の神社庁さんと話をし、『白山姫神社』を選定していただいた」

 第2弾が「諏訪神社」に決まった経緯を、こう話した。

「諏訪神社とうちとは直接的な関係はありません。諏訪神社の宮司さんとはきょう、初めて会いました。福島県の神社庁さんとは30年来の付き合いがあり、諏訪神社を選んでいただきました」(前出の出雲大社・千家宮司)

 諏訪神社の木幡輝秋宮司によれば、高台にあるため、8年前には津波の影響はなかったが、地震の揺れで本殿は倒壊し、拝殿も半倒壊状態になったという。

「神社は高台にあるので、3・11の時には住民の避難場所になった。神社は今は更地。私も福島市に避難し、今はそちらで暮らしています」
昨年11月上旬、宮司や氏子総代、地元の浪江町、双葉町の区長らで、「諏訪神社」再建の話が持ち上がっていたところに、今回の無償プロジェクトの対象に選ばれたという。

「自力で再建するのは大変ですから、ありがたいです。建物は造っていただきますが、鳥居やこま犬は氏子さんで造ります」(木幡宮司)

 無償で再建する理由について吉村・創建会長はこう語った。

「地震が起きますと、圧死なさる方が多い。それが10年前、北海道の倒産した会社の工法ですと、ゆっくり倒れますので、逃げる時間が十分にある。この技術を失くしてしまうのは日本の損失だろうと考え、個人で会社を買った。4年前、北海道の石山神社を再建し、氏子さんや宮司さんに涙を流して喜んでもらって、この工法を世の中に出していきたいと思った。無償プロジェクトを通じて、出雲大社の千家宮司とお会いできたのは私の財産。このプロジェクトを通じて、会社も羽ばたきたい」

 諏訪神社の木幡宮司は、再建がかなったら、「まずはお祭りをしたい」という。(本誌・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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