「日大の地方にある学部は、今回の問題の影響を受けないと見られていた。悪いイメージがSNSなどネットで拡大したのが大きく影響したのでしょう。この数字を見ると、来年、今年の反動で志願者が増えるには信頼回復が必要でしょう」

 日大が大きく志願者を減らした一方で、その受け皿になったのは専修大と駒澤大だ。それぞれ22.5%、8.9%と大きく増加した。東洋大は0.5%増と昨年並みにとどまった。石原さんは「東洋大は年々人気が高まり難易度が上がっており、敬遠された」と分析する。

 産近甲龍は軒並み増加した。京都産業大は9.8%、甲南大は16.8%、龍谷大は8.8%増えた。近畿大は近年人気が高く、難化傾向にあるため、敬遠される可能性もあったが、2.1%増加した。併願率が500%と高く、今年度は理系学部でセンター利用入試の種類を増やしたことが、志願者の増加につながった。入学センターの担当者は「国公立大志望者が合格の『保証』を求めてセンター利用入試を受けた」と見ている。

 その他の大学でも大幅に増えている。

 桜美林大は69.3%の激増。4月から開設する東京・新宿の新キャンパスに、東京・町田キャンパスにあるビジネスマネジメント学群が移転するため、同学群の志願者が増加した。

 武蔵野大も59.5%増と大きく増やした。近年、最先端の学問として注目されているデータサイエンス学部を今年新設し、志願者が集中した。14年には法学部や経済学部をつくり、昨年は東京・有明にあるキャンパスの拡張計画が明らかになり、志願者獲得につながっている。

 関西でも産近甲龍に次ぐ大学で志願者が伸びている。神戸学院大が38.2%、摂南大が21.7%と大きく志願者が増加した。

 一方、中堅私大で大きく減らしたのは成城大、大東文化大など。成城大や大東文化大は昨年、志願者を20%以上増加させたため、今年は敬遠されたと見られる。

 定員厳格化の影響は今年も色濃く出た。各大学の志願者数の増減の幅は大きい。来年は最後のセンター試験が実施されることもあり、受験生がより安全志向を強めると予想される。しばらく落ち着かない入試が続きそうだ。(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日 2019年3月8日号

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら