室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、安倍晋三首相の改憲理由の説明に呆れる。

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 その昔、トンデモない男と付き合っていたことがある。その男には多額の借金があった。あたしは彼に請われ、職場から賃金の前借りをしてまで、彼の借金の支払いを助けていた。なのにその男、あたし以外の女と海外旅行へいった。温泉旅行へもいっていた。

 落ちていたカードの支払い明細を見て、そのことがわかった。あたしはその男に、「どうなってるの?」と尋ねた。するとその男は、いきなり怒りだした。自分を信用していないと。そして、最後はカードの支払い明細を勝手に見たあたしが、悪いことになっていた。いかに人としてダメであるかを罵られた。

 なんか、つまんねーこと思い出しちゃったな。というのも、2月13日の衆議院予算委員会の、安倍首相と立憲民主党の本多議員のやり取りを観たからだ。

 本多議員は安倍首相に、改憲したい理由を尋ねた。その一つとして、安倍首相がいっている──自衛隊員の息子がお父さんに、「お父さんは憲法違反なの?」と涙ながらに訴えたという話──を取り上げた。駐屯地のそばで育った本多議員の実感としてそれはないそうで、彼は「事実か? いつどこでそれを聞いたのか?」と聞いた。

 安倍首相はいきなり激高しだした。「私の言ったことは嘘だと言っているんでしょ。それは非常に無礼な話ですよ。本当だったらどうするんですか、これ」という風に。このときはいわなかったが、〆に「旧民主党政権より……」ってまたいうのかと思っちゃった。

 痛いところを指摘されると激高し、論点をすり替える。一気にまくし立て、最後、指摘してきた相手が悪いことにするまでできたら、褒めてつかわしたのに。紛れもなく、トンデモ・キングですと。

 ま、安倍首相は、「旧民主党政権より」とよくいうわけで、そう思っているのは確かだけど。

 そうそうこの件に関し、16日、週刊朝日の元敏腕編集長であり、現『THE POWER NEWS』代表の山口一臣さんのコラム、『「日本会議」のチラシを鵜呑みにしていた安倍首相の“改憲理由”』がYahoo!ニュースにあがっていた。

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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