父に言われたときに、父が「鈴木家」の長として僕にバトンを渡したのだと思いました。僕は長男なのですが、「鈴木家を継ぐ」と意識して生きてきたことはありませんでした。自分と同じ世代で「家」を意識して生きている長男はどのくらいいるのだろうか?

 父は自分の命が少ない状態で、僕に鈴木家の長として頭を下げて、お願いをしてきた。これからは自分が鈴木家の長なんだという責任を初めて感じました。

 南房総市のお寺にうちのお墓があります。父もそこに入ることになり、僕も、そして妻も、息子もそこに入ることになる。

 僕が年を重ねて、息子が大きくなり、僕がこの世を去るときに、父がしたのと同じように、「鈴木家」の長であることの責任のバトンを渡していくのが自分の最後の役目になるのだと教えてもらえました。お父さん、ありがとう。

週刊朝日  2019年3月1日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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