「身体的な問題も関わってきますし、社会的な立場や習慣、風習の影響も受けますからね。規制の厳しい環境の中では、たとえ自分自身の中に欲求があっても押し隠そうとする人も多いはずです」

 実は女性の身体にもテストステロンが分泌されている。しかし女性の場合、男性のようにその分泌量が大きく変動しているわけではない。

「60代になるとグッと落ちると言われていますが、それまでは特に増えることもなければ減ることもないと考えられています」

 女性の場合、妊娠中は女性ホルモンの分泌が活発になるので、テストステロンは抑え込まれることになる。そのため妊娠期は、女性の性欲レベルはダウンする。だが更年期を迎えるとき、意外なことに医学的には女性の性欲はアップの方向に向かうという。

「よく『更年期になると女性ホルモンの分泌が減るから、女性は性欲も一気になくす』などと言われていますが、それは間違いです。女性の場合、閉経に向かって女性ホルモン・エストロゲンの分泌は減少していきますが、テストステロンの分泌はそれまでどおりなので、相対的に考えればテストステロンが優位になってきます。ということは、医学的には更年期に近づいてからのほうが、女性の性欲は顕著になってくるのです」

 しかし日本では近年「セックスレス」という現象が加速度的に進んでいる。その理由はいったい何なのだろうか。

 日本家族計画協会では2002年から「男女の生活と意識に関する調査」を行っている。16年に行った調査では、1カ月間にセックスを一度もしなかった521人に「セックスに対して積極的になれない理由」を聞いたところ、

「男女共に『相手がいない』と回答した人が一番多かったです(*調査対象は満16歳から49歳の男女)。様々な要因が考えられますが、いまはスマホを操作すれば性に関する過激な映像も簡単に手に入る時代ですからね。生身の人間と関わらなくても自分の欲はある程度満たせる。そう考えたりすると、わざわざ実際の性行為に気持ちが向かわないことも多くなるのではないでしょうか」

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