死亡保険金は、書類に不備がなければ5営業日以内で払われるのが一般的。即日払いの保険会社もあるなど、現金をすぐ手にできる点でメリットが大きい。

 なお、民法改正によって、被相続人の預貯金の一部の払い戻し制度が7月から始まる。これまでの不便はやや解消されそうだ。

 葬儀を終えて一段落し、四十九日の前後に向き合うのが遺品整理。パソコンやスマホ内のデータなどデジタル遺品の整理は、最近の遺族の困りごとの一つだ。

「デジタル遺品の整理中、遺族にはとても見せられないような画像を発見することも少なくありません」

 遺品整理や生前整理事業をする会社「マレリーク」(大阪府)の近藤博之社長はこう話す。

 故人の使用品を手に取って思い出に浸り、遺族が気持ちに区切りをつける作業となる遺品整理。不快な思いを与えぬよう、画像やデータは定期的に整理しておくとよい。

 総務省によると、日本人のスマホ所有率は7割超で、70歳代のネット利用率も約5割。80歳以上でも約2割がネットを普段から使うという。パソコン内の文書や画像だけでなく、ネット銀行やネット証券での取引などもある。放置すれば、思わぬ問題を引き起こす。

 遺産分割の協議後、ネット証券などで株や国債を保有しているとわかれば、協議をやり直す必要があるかもしれない。外国為替証拠金取引(FX)や先物・オプション取引で損失が出ていれば、遺族が背負うケースもある。定額制の有料サービスは解約しないと、課金が続く。

 故人が普段どんなサイトに接続していたかは、パソコンやスマホを開けないとわからない。そのためのIDやパスワードを知らず、遺品整理の入り口から、つまずく人も少なくない。

 前出の近藤社長は「パソコンならば、IDやパスワードがわからなくても確認できるが、最近のスマホはセキュリティーが強固で開くことはほぼ不可能。(故人の)スマホを見たいとの依頼は多いが、ほとんど断っている」と打ち明ける。

 トラブルを避けるため、生前にデジタル遺品を一覧表にしておきたい。IDやパスワードをエンディングノートなどに記し、家族がわかるようにする。ただ、それを見て家族が使い込んだり、盗難に遭ったりする恐れもゼロではない。心配ならば、IDとパスワードを別々に書く工夫もよい。

 マレリークは、デジタル遺品を管理しやすくするスマホのアプリ版エンディングノートを1月中に提供する。遺族が見てほしいデータと見てほしくないデータを分けて保管でき、見てほしくないデータは遺族がアプリを立ち上げた際に自動削除される機能を備える。

 目に見える遺品、見えないデジタル遺品ともに生前からの整理を心がけたい。(及川知晃)

週刊朝日  2019年2月1日号