宿題も期末テストもなし! 「学校の目的は何か」を問う一冊 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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宿題も期末テストもなし! 「学校の目的は何か」を問う一冊

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黒瀧健太週刊朝日#読書

工藤勇一(くどう・ゆういち)/1960年、山形県鶴岡市生まれ。公立学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長等を経て、2014年から千代田区立麹町中学校校長。教育再生実行会議委員などを歴任(撮影/岡田晃奈)

工藤勇一(くどう・ゆういち)/1960年、山形県鶴岡市生まれ。公立学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長等を経て、2014年から千代田区立麹町中学校校長。教育再生実行会議委員などを歴任(撮影/岡田晃奈)

 定期考査や宿題をなくし、固定担任制もやめた──そんな学校改革が話題の東京都千代田区立麹町中学校・工藤勇一校長の初めての著書が『学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革』(時事通信社 1800円※税抜)だ。

 工藤さんの原点は、初めて赴任した山形県の中学校にあるという。

「一番学びになったのは自治活動ですね。特に学級会活動では、人材育成論と組織論を実践的に学んだ気がします」

 生徒のリーダーたちに、学級にどんな組織を作るか、ゼロベースで話し合ってもらう。大切なのは目的の設定で、「君たちの学級だよ。君たちが生活しやすいように決めていこう」と問いかける。生徒は自分たちの行動に責任を持ち、うまくいかなかったら、なぜかを考える──。

「リーダーたちは『みんなが動いてくれない』と相談に来ます。僕は『人って動かないもんだよ。それを動かすのがリーダー』と励ますのですが、それは僕自身に向けられた言葉にもなる。そうやって生徒たちと一緒に組織論や人材育成論を学んだんです」

 そんな教師のあり方を変えてしまったのは、高度成長と学歴社会ではないか、という。

「いい会社に入って定年まで勤めるなら、自分で考えて行動するのではなく、人の言うことを聞く人間に育てたほうがいい。加えて授業は教師が情報を一方的に伝達し、生徒はそれを暗記していくスタイル。これでは、当事者意識を持った民主主義の担い手を育てることはできません」

「僕はただ教育を本質から考え、構築していこうとしてるだけ」と工藤さんはいう。では学校の最も重要かつ本質的な目的とは何か。

「学校には多様な生徒がいます。そして多様さを認めなければ『社会』になりません。でも多様な人を認めるのは難しいことです。多様さに出会うと人は大体イライラします。まずはそうした自分がいることを知ることも学校での大切な学びです。そのうえで何かをひとつに決めなければならないとき、『みんな違っていい』けど、『どのひとりも大切にする』、このことを両立させることは非常に難しい。しかし、共有できる上位の目的に向けて、粘り強く対話し続ければ、必ず合意することができる。この一連のプロセスを経験できるからこそ学校には価値があると思うんです」

 その好例として挙げられるのが、生徒を主体に運営された麹町中学校の体育祭だった。

「最上位の目的は『生徒全員を楽しませること』。運動が苦手な生徒も楽しめて、得意な生徒がガッツポーズできる体育祭にするにはどうすればいいか、生徒たちは懸命に考えます。そこで持ち上がったのが『全員リレー』をやるかどうかでした。当初アンケートでは、生徒の9割が賛成し1割が反対でした」

 しかし、生徒たちが出した結論は、最上位の合意形成に基づく、高度に民主主義的なものだった。本書のもっとも印象的な場面のひとつ。ぜひ手に取って読んでみてほしい。

(黒瀧健太)

週刊朝日  2019年2月1日号


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