私の聞き方はまず、自分の興味のあるテーマから聞くことにしている。最近は、田原総一朗のギロン堂、連載小説3編、嵐山光三郎のエッセイ、最後の編集長後記だ。これらを聞き終えてから、また最初に戻し、ゆっくり数日かけて聞くようにしている。

 私は地元の小さな金融機関で働いていた。視覚障害者の身となった後も、ルーペを使って事務仕事をさせてもらっていたが、視力の衰えは如何ともしがたく、56歳で長年お世話になった職場を退職した。翌年、鍼灸マッサージ師を目指し、県立千葉盲学校理療科へ入学。3年間勉強し60歳にて自宅で鍼灸マッサージ治療院を開業した。

 それから15年の歳月が流れようとしている。通ってきてくださる患者さんは、ほとんど中高齢者の方である。治療は長くなるので、自然いろいろな世間話をしながらとなる。

 健康、介護、相続、身内での悩み事、政治経済、テレビのワイドショーでの話題等さまざまである。その際、私は「週刊朝日」で聞いている情報をネタにして話を広げていく。時には、話に熱中して施術の手が止まっている時がある。先だっての「週刊朝日」のトップに「歩いての健康増進法」が載っていた。足腰が衰えたと訴える患者さんに、年代に応じた歩数のことや、インターバル速歩の効用の話をしてみた。患者さんは真剣に聞いてくださり、「やってみようかしら」と言ってくださった。

 このようにデイジー版「週刊朝日」のさまざまな情報を話題にしながら、日々治療にあたり、患者さんとのコミュニケーションを深めさせていただいている。

 カセットテープから、音声デイジー版「週刊朝日」に変わり、格段に多くの情報が私の耳に届くようになった。視覚障害者にとって、社会の動きをタイムリーに知ることの出来るかけがえのない情報媒体である。

 多くの関係者、音訳ボランティアの皆様のご協力、ご奉仕によって、カセットテープ版、そしてデイジー版による「週刊朝日」が半世紀近く届けられてきたことに、ただただ感謝申し上げたい。これからも毎週届けられる音声デイジー版「週刊朝日」からの情報に耳を傾けながら、生涯現役の気概を持って、残された人生の日々を歩んでいきたい。(本誌 佐藤修史)

※週刊朝日オンライン限定記事