誕生日におことばを述べる天皇陛下と美智子さま=2018年12月 (c)朝日新聞社
誕生日におことばを述べる天皇陛下と美智子さま=2018年12月 (c)朝日新聞社
大嘗祭で悠紀殿に向かう天皇陛下=1990年11月 (c)朝日新聞社
大嘗祭で悠紀殿に向かう天皇陛下=1990年11月 (c)朝日新聞社

 天皇陛下の涙の誕生日会見や秋篠宮さまの大嘗祭(だいじょうさい)発言など、代替わりを目前に控えたいま、皇室からの発信が続いている。歴史から皇室のあり方を読み解くノンフィクション作家の保阪正康氏と、宮内庁取材の第一人者である元朝日新聞編集委員の岩井克己氏が語り合った。

【写真】現在の天皇陛下の大嘗祭の様子

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■「長官は聞く耳を持たなかった」 秋篠宮さま発言に込められた深謀遠慮

保阪:あの会見で、秋篠宮さまは記者の質問に答える形ではなく、意図して大嘗祭の話題を切り出しました。天皇陛下と皇太子さま、秋篠宮さまの三者会談で事前によく意思を確認し合っていた、という印象です。

岩井:そもそも、大嘗祭については、昭和天皇も私的なお金の内廷費を積み立てて行うべきものと考えていました。さらに、弟の高松宮も「大嘗宮を建てなくても、毎年の新嘗祭(にいなめさい)を行っている神嘉殿(しんかでん)でやればいいじゃないか」と話すなど、政教分離のけじめをつける前提で考えていた。

 憲法の定める政教分離の原則に照らして、大嘗祭への国費支出が合憲かどうか、いまだ議論は尽くされていません。前回、内閣法制局は「公的色彩のある私的行事」という強引でグレーなカテゴリーを作り、大嘗宮建設などに22億円もの国費を支出した。批判は消えていないし、大阪高裁も「違憲の疑いは一概には否定できない」と指摘しています。

保阪:なのに官邸は、前例踏襲で議論をしないまま進めてしまった。

岩井:秋篠宮さまの発言は、皇室内でもこうした意見があるのだと、記録にとどめておこう、という意味の発信だった。

 大嘗祭に反対というわけではない。既に大嘗宮の造営が決定している兄の即位儀式に波風を立てたいのではない。将来、秋篠宮さまが即位する場合は、政教分離のけじめをつけたいという宣言だったのでしょう。

保阪:なるほど。ところで、山本信一郎宮内庁長官への「聞く耳を持たなかった」というのは、普通であればケンカごしの強い言葉です。秋篠宮さまは、言葉の強さをどこまで意識していたのか。

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