三つ目は、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う関税問題だ。日産の欧州生産の拠点は英国サンダーランド工場。英国の自動車総生産の3分の1を占め、年50万台近くを生産する。生産車の約8割は輸出され、大半が欧州向け。一方、部品の多くはEUから調達。英国のEU離脱により、完成車の輸出のみならず、調達部品にも関税がかかる可能性がある。

 自動車調査会社カノラマジャパンの宮尾健代表は、日産の部品調達をルノーと一本化して効率化を進めたのがゴーン氏と指摘する。
「英国EU離脱で関税の問題が浮上するのは皮肉だ」

 英国が国民投票でEU離脱を決めた2016年、ゴーン氏はメイ首相と直談判し、サンダーランド工場の競争力維持のため英国政府が支援するとの公約を得た。しかし、英国は隣接するアイルランドとの国境管理問題などに頭を悩ませており、メイ首相が国内をまとめ切れない状況に陥っている。

 日産の前途に垂れ込める濃い霧はしばらく晴れそうにない。
(本誌 浅井秀樹)
※週刊朝日2019年1月4日ー11日号)