特別背任の疑いで再逮捕されたカルロス・ゴーン日産自動車前会長(c)朝日新聞社
特別背任の疑いで再逮捕されたカルロス・ゴーン日産自動車前会長(c)朝日新聞社
対立を深める日産とゴーン前会長。西川広人社長も無傷ではいられない?!(c)朝日新聞社
対立を深める日産とゴーン前会長。西川広人社長も無傷ではいられない?!(c)朝日新聞社

 カルロス・ゴーン日産自動車前会長と検察側の攻防が激しさを増している。保釈観測もあった12月21日、東京地検特捜部が特別背任容疑で再逮捕。私的投資の損失を日産に付け替えるなどした疑い。再逮捕は、東京地裁が検察側の求める勾留延長を認めないという異例の決定を下した直後のタイミング。前会長は報酬を有価証券報告書に少なく記載した疑いで、2度逮捕されていた。

 特別背任罪での再逮捕について、元検事の郷原信郎弁護士は指摘する。

「特別背任容疑が固いなら、虚偽記載容疑で再逮捕した12月10日にやっているはず。年末に動き出すのは予定外の案件と考えられ、追い込まれていたのだろう」
 
 日産は“ゴーン後”の経営体制で、提携先ルノーから主導権回復を目指すが、前途は多難だ。年明けには3つの難題が降りかかる。

 一つ目は、日産会長職の後任を含めた企業統治(ガバナンス)のあり方。日産は17日の取締役会で後任会長の選任を先送りし、ガバナンス改善の特別委員会の設置を決め、来春までに提言を受けることにした。しかし、大株主のルノーが臨時株主総会の早期開催を求めており、双方がにらみ合う展開だ。自動車評論家の国沢光宏氏はこう話す。

「圧倒的にルノー有利という状況。株主総会を開くと全株主が出席するわけでなく、ルノーが実質的に過半数となる。日産としては打つ手がない」

 会社を私物化した疑惑のゴーン問題でガバナンスのあり方を突き詰めると、経営陣の責任問題に発展する可能性がある。国沢氏は、日産で西川広人社長の続投はないと指摘し、後任はダニエレ・スキラッチ副社長などが候補とみている。

 二つ目は、目先の販売や今後の開発への悪影響だ。

「ごたごたしているメーカーの車をお客さんは買わない」(国沢氏)

 ぎくしゃくした関係が長引けば開発に影響が出る恐れもある。ルノーと日産は三菱自動車を加え、車台(プラットホーム)共通化や部品の共同調達などで規模のメリットを追求し、自動運転の技術開発など巨額投資を要する分野でも協力してきた。国沢氏は「今は競争に出遅れていないが、今後が大事」と指摘する。

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あの問題の思わぬ余波が日産にも