「新しいモノが出ると買いました。自分に似合っているかなんてわからない。そのとき流行っているから買う。そのころの私、変な顔をしてたと思います(笑)」

 毎月化粧品に5万円ほどかける日々は8年続いた。化粧品にかけたお金は500万円超。歯の矯正と美白にもお金をかけた。出産後は、自然派化粧品(オーガニックやナチュラルな化粧品)にハマった。

「オーガニックコスメ」とは、農薬や化学肥料を使用しない原料で作られた化粧品のこと。使用を最小限におさえた化粧品は、「ナチュラルコスメ」という。このジャンルはこの20年ほどかけて市場が成熟。オーガニック大国といわれるドイツやフランス、豪州など海外から多くのブランドが日本に上陸した。

「食べられない化粧品は作らない」がキャッチコピーのドイツの「アンネマリー・ボーリンド」は美容家たちに人気だ。一般に流通する化粧品のように、石油由来の合成保存料が入っていないため、消費期限も短い。

 ニュージーランドの「キャロルプリースト」に至っては、原材料全てがピュアで自然の生きた成分のみ。「だから、商品が店頭に並んでいない。店員さんにお願いして、倉庫の冷蔵庫から出してもらって買うんです。すごいですよね」(椿原さん)

 しかもオーガニックコスメは、ワインのように、その年によって「出来」も違う。椿原さんは、そんな不安定さも楽しむ。

 難民生活をやめる気もない。オーガニックコスメは、商品誕生の裏にストーリーがある。ドイツの「マルティナ」というブランドは、犬に噛まれた傷痕に、植物を配合したクリームを塗ったところ、3~4年でほぼ消えたという体験をもつオーナーが、ドイツ・バイエルン地方にある自然保護区域に社を設立。椿原さんは、その商品開発者にも会ったという。オーガニック愛は深まる一方だ。

「私、死ぬまで買い続けると思います」

 化粧品難民エステティシャンの夢子(仮名・54歳)も、脱出口がないようだ。

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