ヒルズ族の元祖とも言われるホリエモンこと堀江貴文さんは、東京大学を中退して起業し、成功して裕福になりました。そんな彼は幼少期のことを「最悪に近かった」と話しています。何もないど田舎に住んでいて、大好きだったパソコンを母親が勝手に捨ててしまうような環境にあった、と。母親が絶対的な存在で、独断で物事をすすめてしまう人間だったので、彼は幼少期から「欲しいものが得られなかった」そうです。

 二つの例は非常に極端かとは思いますが、これらを分析すると、「好きなものをいとも簡単に与えることは、子どもを成長させない」ことがわかります。そして、こうした親の育て方により、子どもにマタイ効果が表れてくると思うのです。「欲求が多い者はますます欲求を求め、欲求の機会を奪われる者はますます欲求の機会を奪われる」。事実、大人になってからもとにかくのし上がっていく人間というのは、生い立ちを聞くと幼少期に貧乏だったり、抑圧された経験があったりする人が多いな、と思います。

■欲しいものが簡単に手に入らない状況が、貪欲力を鍛える

 そこで、私が息子に対して気をつけているのは、「欲しいと思っているものを容易に与えない」ことです。たとえば、子どもに「このオモチャが欲しい」と駄々をこねられ、その場に立ち尽くして大声で泣かれるケースに、親はよく直面することでしょう。母親は、周囲の視線を気にしてしまうのと、延々と駄々をこねられるのが面倒なのと、プラスして裕福な親は「子どもがこんなに欲しがっているのだから、この程度なら……」という気持ちが生じ、簡単に買ってしまうことがあります。

 親にとっては心理的な負担が減る解決法ですが、「欲しいものが簡単に手に入る」経験をさせてしまうことは、「どうしても得たい」という執着する力、「そのためにはどうすべきか」という考える力を減退させてしまうので、決して子どものためによいとは思いません。逆に、オモチャを買ってもらえなかった経験が多い子どもは、貪欲な気持ちをどんどん強くしていくことでしょう。

次のページ
学問に努めることで生じる差