私たちが食事を取ると、食べものに含まれる糖分が脳にある「腹側被蓋野(ひがいや)」と呼ばれる部分を刺激する。すると、その情報が腹側被蓋野とつながっている側坐核(そくざかく)に届き、ドーパミンが分泌される。ドーパミンは快楽をもたらす脳内物質の一つ。つまり、食事を取るだけで“満たされた気分”になるのだ。

 ストレスが過剰にかかったときや手持ち無沙汰のときに、つい甘いものを口にしてしまったり、食べすぎたりしてしまうのは、手っ取り早く快楽を得られるからだ。さらに、そういう経験を続けることで、依存が生じてしまう。

 依存といえばアルコールやたばこ、ショッピング、ゲームなどを思い浮かべる人もいるだろうが、それらと食べものによる依存はまったく同じもの。それどころか、マウスによる実験では、糖分による依存性は麻薬のコカインよりも強いことが明らかになっている。

「ドカ食いやストレス食いは、まさに依存によるものと言ってもいい。フェーズ(1)の真の目的は、依存や習慣による食べ方のクセを修正するところにあるのです」(同)

 食べたい気持ちが本当に空腹によるものか、ストレスによるものかわからない場合はどうするのか。体のサインを確かめるために役立つのが「ボディスキャン」。これが科学的メソッドの3番目だ。

「あお向けになって目を閉じ、足先から頭へと意識を向けていきます。ボディスキャンをすることで、空腹なのかどうかも含め、体からのサインを受け止めやすくなります。食べる前や食べたい気持ちを感じたときに行うといいでしょう」(同)

 食べるクセへの気付きと修正がフェーズ(1)だとしたら、ときどき襲ってくる“食べたい欲求”にうまく対応するのがフェーズ(2)。食べたいという大きな波に立ち向かうのではなく、サーフィンのように波をうまく乗りこなすイメージだ。

「専門家の間では、この強い欲求は『クレーヴィング(Craving)』と呼ばれています。クレーヴィングが起こっているときは、脳内の後帯状皮質という部分が活性化していますが、マインドフルネスによって後帯状皮質の活動が低下し、クレーヴィングが治まることが研究でわかっています」(同)

 押し寄せる食欲の波、クレーヴィングをうまく乗りこなすための克服法が「RAIN(レイン)」。太らない脳を作る4番目の科学的メソッドになる。RAINとは「認識(Recognize)」「受け入れ(Accept)」「調査(Investigate)」「記述(Note)」の頭文字をとっている。

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