(イラスト/坂本康子)
(イラスト/坂本康子)
ストーカー事案の加害者の年齢。加害者の約1割が60歳以上(週刊朝日2018年11月23日号から)
ストーカー事案の加害者の年齢。加害者の約1割が60歳以上(週刊朝日2018年11月23日号から)

 総務省統計局の発表によると、日本の65歳以上(高齢者)の人口は、2018年9月15日時点で3557万人。総人口(1億2642万人)に占める高齢者人口の割合は28.1%と、過去最高である。総人口は前年より27万人減少しているが、高齢者はなんと44万人も増加している。

【図を見る】ストーカー事案の加害者の年齢は?

 介護を受けたり、寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」も平均寿命と共に延びている。今年3月の厚生労働省の公表によれば、男性は72.14歳、女性は74.79歳だ(国民生活基礎調査による16年の推計値)。

 いまや定年後の人生も長い時代である。体が元気であれば、当然心も元気なシニアが多い。高齢になっても「ときめく心」を失わないことはもちろん生きる張り合いにもつながる。しかし軽はずみな行動から財産を失ったり、それまでの人間関係を台無しにしないようにするためには、やはり年齢を重ねてきた人間なりの配慮と知恵が必要だ。

 森原英子さん(仮名・43歳)は、父親の恋愛問題でいま頭を悩ませている。父親は現在70歳。有名大学を卒業し、大手メーカーで定年まで働き退職。母親は3年前に胃がんがわかり、その1年後に他界した。幸い父には仲がいい友人が何人かおり、その友人たちと旅行のサークル活動を楽しんでいるようだったので安心していた。しかし、とある日のこと、「再婚を決めた女性がいるから」と切り出されたので仰天だ。旅行サークルで知り合いこの1年で急速に親しくなったようだ。

「どうしておつきあいを始めたときに一言いってくれなかったの」と、英子さんは少しきつい口調で言った。

 ひとり暮らしはやはり寂しかったのだろう。でも、亡くなった母のことはもうどうでもいいのだろうか。そして父の相手は本当に信用できる女性なのだろうか。うろたえる英子さんに、父親はいきなり怒鳴り始めた。

「どうしようと、俺の人生だろう! 俺が生きたいように生きて何が悪い! なんでおまえのようなバカ娘に事前承諾が必要だ! おまえが気にしてるのはどうせ財産のことだろう。もともとおまえにくれてやるつもりなどないぞ!」

 とんでもない剣幕でまくしたてる父に、英子さんは涙が出てきた。

「パパ、カッとならないで」
「なんだとぉ」
「急に再婚と言われれば誰だってびっくりするわよ」
「うるせえ! 出てけ! 二度とこの家に来るな!」

 温厚だった父親の豹変ぶりは、英子さんにはあまりにもショックだった。

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