■「ファミコン」マニア/森脇大志

 東京都中野区の公民館で、数十人が大画面でゲームを楽しんでいる。森脇さんが主宰する「ファミコンあつまる」は、今では、区が助成するイベントにまで成長した。

「3年前、中野のゲームバーが閉店して、こんな緩い集まりの場がなくなるのは惜しい、なら自分でやろうと、まったくの手探りで始めました」

 区の掲示板に手作りのビラを貼ると意外なほど子供たちが集まってきた。「子供のことも教育のことも何も知らない僕には、これはものすごい重圧でした。勉強しなくちゃと本を読み始めたら、読むべき本が次々に現れてくるようになった」

 教育論、居場所論、集団論……難解な本も理解できるまで繰り返し読む。

 気づけば、本もゲームソフトも増え続ける一方。

「もう部屋には収まり切れない。でもこの部屋、隣が図書館なので引っ越したくないんですよね」

★とっておきの一冊
『ある異常体験者の偏見』山本七平著、1997年刊。戦時中の著者の体験をもとに、日本型組織を考察した一冊。「集団心理の怖さを学ぶために何度も読み返しています」

1977年、大阪府生まれ。ゲーム会社でシナリオ製作にかかわった後、フリーライターに。3 年前にスタートさせたゲームイベントが、町の活性化策につながると注目されている。

■「食虫植物」マニア/木谷美咲

“うつ”で通院生活をしていた13年前、ふと入った園芸店で初めてハエトリソウを見た。

「すごく元気が出た。植物なのに肉食で、生命力の象徴だと思った」

 早速購入して、ネットで調べながら食虫植物を育て始めた。愛好家の集まりに参加し、即売会に足を運び、気づくと、億劫(おっくう)だった外出もできるようになっていた。

「最近は自生地を見たくて」という木谷さん、千葉、三重……、ついにはボルネオ島やオーストラリアにまで足を運ぶ。

「急な崖を7時間歩き続け、着いたのはヒルだらけの場所。自生するウツボカズラを前に、ただただ感動しました」

 元来、読書好きだったこともあり、食虫植物の図鑑や写真集も買い集めた。3万円の洋書など分厚い本が並ぶ。

 食虫植物が相手なら、読書でも旅行でも、我を忘れて楽しめるという。

★とっておきの一冊
『世界の食虫植物』食虫植物研究会編、2003年刊。野生の状態のままの食虫植物の姿が多数掲載されている写真集。「自生地の写真が勉強になるので、何度も開いている一冊です」

食虫植物愛好家。1978年、東京都生まれ。2005年、園芸店でハエトリソウを見て以来、食虫植物の虜に。『大好き、食虫植物。』『官能植物』『マジカルプランツ』ほか著書多数。

(文/本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2018年11月9日号