東京都文京区での「転倒骨折予防教室」(村田くみ撮影)。参加者は、右膝を伸ばしてつま先をおなか側に引くエクササイズ「片膝伸ばし」に取り組んでいた
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骨の健康度セルフチェック(林泰史医師の考案。お酒2合の目安は、ビール大瓶1本、日本酒360ml、焼酎ストレートで180ml/週刊朝日2018年11月9日号から)
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男女別・年代別にみた体の症状の悩み(数字は人口千人あたりの有訴者率/週刊朝日2018年11月9日号から)
男女別・年代別にみた体の症状の悩み(数字は人口千人あたりの有訴者率/週刊朝日2018年11月9日号から)

 年をとるにつれ、腰痛や手足の関節の痛みなど骨に関する悩みは、増えるばかり。特に、女性は骨粗鬆症の患者が多く、その数は約1千万人。放置すれば骨がさらに弱まり、自覚ないままに「いつの間にか骨折」に陥ることもある。

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 東京都内に住む男性(82)は約1年半前、部屋のふすまの縁に足をとられて転び、腰を痛めた。自宅近くの整形外科医を受診し、診察の結果、骨粗鬆症により背骨の椎体(ついたい=脊椎)がつぶれる骨折「骨粗鬆症性椎体骨折」だった。医師から「コルセットをつけて安静に」と言われた。

 実は数年前にも、別の椎体を骨折したことがある。そのときも、手術せずにコルセットをつけて安静にする「保存治療」をとった。すると、しばらくして痛みが消えた。今回も同様に保存治療を試みたが、4週間たっても痛みが消えない。日常生活にも支障をきたすようになった。

 結局、紹介状を書いてもらって大学病院に転院し、その病院で手術を受けた。

「高齢者は骨粗鬆症が進み、骨がもろくなると、少しの衝撃でも折れやすくなるのです。骨折は、いつもポキンと折れる(つぶれる)とは限らず、尻もちや転倒したことをきっかけに骨がダメージを受けて少しずつつぶれてくることがあります。この場合、骨折に気づきにくいのです」

 そう語るのは、男性の手術を担当した、東海大学医学部付属八王子病院整形外科医長の山本至宏(ゆきひろ)さん。

 骨粗鬆症による骨折といえば、転んだ衝撃で脚の付け根や股関節が折れる「大腿(だいたい)骨近位部骨折」が一番多いと思われがちだ。しかし、実際は背中の骨が折れる「椎体骨折」が最も多く、全体の4分の1を占め、年間約30万人が発症するという。

 骨粗鬆症性椎体骨折は、重いものを持ち上げたときや、尻もちをついたときに起きやすい。ほかにも、せきやくしゃみ、前出の男性のようにふすまの縁に足をとられることも原因となる。特に思い当たるきっかけがなく背骨が折れる“いつの間にか骨折”ということもある。

「寝返りや起き上がる動作など、体を動かすときに腰が痛くなる。座ったり立ったりすると楽になるが、5~10分ほど同じ姿勢でいると痛くなる。そんな症状が多いです。動けないほどの痛みではなく、たいていの高齢者は、骨折はしていないだろうと我慢してしまいます。その結果、骨折が進行し症状をさらに悪化させるのです」(山本医長)

 いつの間にか骨折は、三つの症状があるという。

 一つ目は、痛み。そもそも特段の痛みを感じないので「いつの間にか」骨折と言われるが、その後に痛みが出ることがある。寝返りをうてない、前かがみになるとつらい、などだ。

 二つ目は、背中が曲がって丸くなってくる。

 三つ目は、1年ぐらいの短期間で身長が2センチ以上低くなる。これらの場合は、背骨の骨折を疑ったほうがよいという。

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