「地下空間の柱状の基礎部分を通常より太くして重くなり、杭にかかる負荷を軽減するために建物のトータルの重さを軽くする必要性に迫られたのです。このため、梁をすべてSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造ではなく、鉄骨にせざるを得なくなったのです。梁を細くできる鉄骨造はコンクリートよりも曲がりやすいので、大きな地震で変形します」

 構造物自体を軽くしなければならないのだから、床積載荷重も制限されている。通常の流通施設は1平方メートル当たり1.5トンあるものだが、仲卸業者が入る「6街区」は半分以下の700キログラムしかない。このため、2.5トンフォークリフトが800キログラムまでしか運搬できないというおかしな事態が起きている。

 実際、商品の持ち込みまで抑制させられた業者もいる。物販の店主が困惑しながら語る。

「うちはいけすに使う塩も扱っていますが、1パレットで1トン半あります。豊洲での営業直前に、都の職員から『何トンも持ち込まないでほしい。ちょっと自重してほしい』と言われました。まさか、そんな細かいことまで指示されるとは思わなかった。業務用の冷蔵庫や水槽なども相当重くなるから、注意を受けたのは私だけではないはずです。パレットを2段に積まないなど、荷物をなるべく分散して置くようにしています。都の決めたことには従わないと仕方がない」

 一方、土壌汚染は現在も深刻で、環境基準を大幅に上回るベンゼンや猛毒のシアンなどが検出されている。9月下旬にはマンホールから大量の地下水が噴出する“事件”が起きた。地下水位はいっこうに下がらず、揚水ポンプでくみ上げて処理施設に送り込んでいる始末だ。噴き上がった地下水は揚水ポンプから漏れ出したものだが、汚染されていたら土壌汚染対策法違反の可能性も指摘される。

 実は、建物のいびつな構造設計は土壌汚染と無関係ではない。この問題を追及している1級建築士の水谷和子氏が言う。

「本来ならば、基礎部分の下に地下梁を渡して強化しなければならなかったのです。しかし、地下室の下はシアン化合物、水銀、六価クロム、ヒ素、鉛など重金属で汚染されているため、工事ができなかった。そのかわり、地下空間の柱状基礎を太くしなければならなくなったのです」

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大地震で立入禁止エリアになる可能性も