“痛快な人間関係の本質”『友だち幻想』の魅力を作家が解説 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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“痛快な人間関係の本質”『友だち幻想』の魅力を作家が解説

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 小説家の長薗安浩氏がベストセラーを“解読”する。今回は、『友だち幻想 人と人の<つながり>を考える』(菅野 仁 ちくまプリマー新書 740円 38万部)を取り上げる。

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 10年前に刊行された菅野仁『友だち幻想』は、副題にあるとおり、「人と人のつながりを考える」良著として少しずつ読み継がれてきた。しかし、昨年あたりから各メディアで再注目され、今年の4月に又吉直樹がテレビ番組で紹介した直後、大ブレイクした。

 友だちをたくさん作って、みんなと仲良くしていきましょう──昔からよく聞くこのメッセージは、理想を説く一方で多くの若者を悩ませてきた。周囲からは友だち関係をうまく維持しているように見えても、そのために疲弊したり、不安を覚えながら学校生活を送る学生がいかに多いか。だからこそ、そろそろそんな幻想から解放されるべきだと菅野は主張し、学生が読んでも理解できる社会学の手法を活用した処方箋を、ここに提示してみせた。

<他者=自分以外のすべての人間>

 この本が優れているのは、他者について明快に解説している点にあると私は思う。ここを基底とし、他者は自分ではないのだから異質であり、異質であるからこそ、自分と完全に共鳴したり、自分をすべて受けいれてくれたりすることはないと説くあたりは、痛快なほど人間関係の本質を突いている。その上で、「他者が自分を完璧に理解してくれることはない」と認めて絶望するのではなく、そこを<希望の出発点>とする発想を求めるあたりに、菅野の誠実さがよく出ている。私も体験的にわかるが、そこを通過しない限り、友だち幻想からは逃れられないのだから。

 菅野は2年前に亡くなってしまったが、彼が遺した本の価値はますます高まり、若者だけでなく幅広い世代の人々を救っている。

※週刊朝日 2018年10月12日号


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