森下:お互い、まさかまさかですね。夏目さん、当時はオーバーオール着てましたもんね(笑)。朝日新聞がまだ有楽町にあったころ。

夏目:当時、森下さんのネタは、聞いててすぐ絵が浮かんできたんですよ。今回の映画化も、そういうところがあったんじゃないかな。書くものもどんどん洗練されていって、ホントね、清少納言の末裔(まつえい)ではないかと。

森下:ちょちょ、待って!(笑)。私がデキゴトロジーのライターだったころは、週1回、夏目さんの仕事場までネタを仕込みに行ってたんですよね。

夏目:それぞれのライターさんにネタをしゃべってもらって、僕が全体の構成を考えるというのが、当時のスタイルでした。

森下:夏目さんがいれてくれたコーヒーを飲みながら私たちがしゃべって、夏目さんが「うん、うん」とか言いながらメモして、時々質問したりして。デキゴトロジーの企画で『典奴』として京都の祇園で舞妓修行をして。踊りを皆さんの前で披露したこともありました(笑)。

夏目:あれはすごかった……。ウルトラマンかロボットが指をピッとか出しているようで(笑)。

森下:ひどい言われようでした(笑)。

夏目:そうそう。そのウルトラマンみたいなイメージがあまりにも強くて。その後、みんなにお茶を点(た)ててくれたことがありました。もちろんお茶自体はそつなくできてましたが、失礼ながら、茶事を味わうよりも、そのウルトラマンのイメージがある典奴がお茶を点てていること自体がおもしろいっていうほうが勝っちゃってね。

森下:デキゴトロジーのメンバーは、みんな仲がよかったですよね。取材で香港へ行ったこともありましたね。

夏目:食い意地がはっているというのが、みんなの共通項。香港人に、『お前たちは日本人じゃない』と言われたよね(笑)。日本人はそんなに食わんと。

森下:デキゴトロジーのライターをやりながら、お茶のお稽古に通い始めて。稽古に通うのは、もちろんお茶の上達が目的なんですけれど、行く道の途中から、もう日常とは違う空間に入り始める。稽古に通う意味ってそこにあるような気がするんです。書くこととお茶のお稽古に通うこと、それがずっと私にとっての両輪である気がするんです。お茶をやっていなかったら、ここまで書き続けていられたかなぁ、って。

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長く何かを続けることで見えてくるもの