植木理恵医師(順天堂大学皮膚科学先任准教授/順天堂大学順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科科長)
植木理恵医師(順天堂大学皮膚科学先任准教授/順天堂大学順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科科長)
女性の薄毛データ (週刊朝日2018年10月5日号から)
女性の薄毛データ (週刊朝日2018年10月5日号から)
赤色ナローバンドLEDによる治療(イラスト/今崎和広)
赤色ナローバンドLEDによる治療(イラスト/今崎和広)
タンパク質、鉄、亜鉛を含む食品(イラスト/今崎和広)
タンパク質、鉄、亜鉛を含む食品(イラスト/今崎和広)

「髪のボリュームがなくなった」など、女性でもひそかに薄毛の悩みを抱えている人は少なくない。女性の薄毛には決定的な治療法がなかったが、近年開発された光治療や、セルフケアで改善が見込める。

【女性の薄毛データ】かかりやすい年代や主な治療法などはこちら

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 女性の薄毛は、そのタイプや症状が千差万別である。男性型脱毛症(AGA)のような「前頭部の生え際、頭頂部の毛髪が薄くなる」といった典型例がない。その多くは、頭髪が広範囲に薄くなる「びまん性脱毛症」だが、そのなかに、男性ホルモンによる「女性型脱毛症」、ヘアサイクルにおける休止期(抜け毛の時期)の毛根の割合が増えてしまう「慢性休止期脱毛症」、加齢変化による薄毛がある。時にはそれらの症状が重なっていることもあるという。順天堂大学皮膚科学先任准教授の植木理恵医師は、女性の薄毛治療はまずは診断で他の病気との判別が重要と説く。

「ホルモンによる病気や膠原病、橋本病やバセドウ病といった甲状腺の病気でも髪が抜けます。貧血や急激なダイエット、拒食症などの栄養障害でも薄毛になります。これらによる薄毛は、10~20代の女性に多いです」

 女性の薄毛は概ね30歳ぐらいから気になりはじめる人が増えるが、悩みの訴え方にも個人差が大きい。加齢変化による薄毛は更年期前の40代後半ぐらいから多くなる。

 時には生理不順や冷え性などの婦人科疾患を伴う場合もある。その場合、植木医師は婦人科を紹介し、そこで漢方薬の処方や適切な生活指導を受けてもらうという。

 女性の薄毛治療は現在のところ、外用薬であるミノキシジル(商品名リアップリジェンヌ)が最も推奨される第一選択薬だ。

 昨年、日本皮膚科学会が発行した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも、ミノキシジルは女性型脱毛症では唯一の推奨度ランクA(おこなうよう強く勧める)の治療薬とされた。

 判別しにくい女性の薄毛だが、どのタイプの薄毛でも概ねミノキシジルが効く。初期の脱毛であれば、同じく外用薬である塩化カルプロニウム(商品名フロジン液など)が処方されることもある。塩化カルプロニウムはミノキシジルよりも安価なため、経済的な理由で選ぶ患者も多い。

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