ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。先日EUで可決された著作権指令案を解説する。
【写真】欧州議会を訪れた米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者
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欧州議会は9月12日、インターネットの未来を左右しかねない著作権指令案を可決した。この指令案は、苦境が続く欧州メディア・コンテンツ業界に、巨大化する米国IT企業の収益を還元させることを目的としている。その最大の標的は、ネット広告の6割を寡占するグーグルとフェイスブックだ。
その影響は欧州のみならずインターネット全体に波及することもあり、この数カ月間、世界中で議論が巻き起こっていた。両陣営がロビー合戦を繰り広げる一方で、ユーザーからも「インターネットの自由が損なわれる」として反対の声が上がり、その行方は混迷を深めていた。
最大の争点は、著作権侵害コンテンツの投稿を防ぐための自動検出・削除システム「アップロードフィルター」を規定した第13条だ。原案から変更が加えられたものの、コンテンツ投稿サービスやソーシャルメディアは、著作権侵害を予防するフィルターを導入するか、レコード会社や出版社ら権利者と事前のライセンス契約を結ばなくてはならなくなる。
その狙いは、ユーチューブやフェイスブックをはじめとするプラットフォームが、著作権侵害から不当な利益を上げることを防ぎ、権利者に適正な対価を還元することにあるとされる。
しかし、その狙い通りになるかは疑わしい。すでに大手プラットフォームは多額の資金を投じて自発的にフィルターを導入しているからだ。むしろその競合となる中小規模のサービス事業者に重い負担が課され、大手の影響力をさらに強める結果に終わる可能性もある。