記者も何回か試みたが、最初はかき混ぜが足りず、コップの下に塊ができてしまった。「サラサラ」も「技」が必要なようだ。ただし、濃くて原酒っぽいお酒で試すと、しっかりと味が残り、おいしさを実感できた。

 日本酒でできるのだから、ほかのお酒でもできるはず。ニュートリーの横山さんは、

「ほかのお酒でもチャレンジできると考えています。実は、数年前にビールで作ったときは、意外に炭酸が抜けず、おいしいと社内外で評価が高かった。嚥下障害の方の食べる楽しみにつながるのなら、焼酎やワイン、ウイスキーなどの要望にも応えていきたいと思います」

 嚥下障害になりたくはないが、万一なっても食べる楽しみを失わずに済む方法があることは覚えておきたい。酒好きなら、「お酒が飲める」というキーワードが記憶の定着に役立つのではないか。(本誌・首藤由之)

【嚥下酒の作り方】
■とろみ酒
・お酒……100ml ・市販のとろみ剤……1~2グラム(お酒の1~2%)※
お酒にとろみ剤を加えて、スプーンでかき混ぜる。とろみがついたら完成
*お酒は熱くても冷たくてもOK

■ゼリー酒
・お酒……100ml ・市販のゲル化剤……0.3g※
鍋にお酒を入れ、ゲル化剤を加える。火にかけ、泡だて器で、焦げないように混ぜながら、70度以上に加熱。器に流し込み、ゼリー状に固まったら完成
*ゼリーは70度以下になると固まり始める

※ニュートリーの製品を使う場合の分量

【「酒の特徴がよく出ている」とされた「嚥下酒」】
■とろみ
秋田 太平山 純米大吟醸天巧 吟醸の香りが広がる
山形 出羽桜 桜花吟醸酒 含み香が華やか
宮城 純米吟醸 浦霞禅 ドライだが、元のお酒の味わいを感じる
福島 末廣 山廃純米  味が残っていて熟成感、酸味がある
福井 黒龍 純吟 リンゴ、メロンのような香り
佐賀 天山 地酒純米原酒 米の味がある。後口まろやか

■ゼリー
京都 月の桂 にごり酒 甘み、ガス感、いろいろな味わいが楽しめる
山口 獺祭 純米大吟醸 二割三分 甘みが多く、ゼリーにしたときの良さが出る

「ご当地嚥下食ワールド」のスペシャルコンテンツ「ご当地嚥下酒」から抜粋

週刊朝日  2018年9月28日号