ただし、見た目が変わるほどの効果を得るためには、それなりの量を毛包単位で移植する必要がある。そのため費用が高額になりやすいのが、デメリット。また日本人よりも内服薬や外用薬の効果が毛質的にみられにくい欧米人の治療で、頻繁におこなわれている。

 近年、AGA治療の選択肢に光治療が加わった。赤色ナローバンドLEDや低出力レーザーを使った治療で、前者は乾医師ら国内の医師の共同開発による日本発の最新治療だ。

 赤色ナローバンドLEDは波長の長い特定の赤色光を頭皮に照射することで毛乳頭細胞を刺激し、毛を増殖させる物質の分泌を促す。その結果、毛の成長が早まると考えられている。

 赤色LEDは安全で副作用がないのが特徴だ。照射してもじんわり肌が温かくなる程度で、日焼けや火傷の心配がない。新ガイドラインにも推奨度Bで新たに加わった。

「赤色LEDを内服薬や外用薬と併用すれば、より効果が高まると考えられます」(同)

 不整脈などの副作用が出る恐れがあるため、これまで薬剤が使えなかった高齢者などにも治療の幅が広がった。通院しなくても、自宅で使用できる小型の赤色LED機器なども販売されている。

 また、新ガイドラインから新たにウィッグ(かつら)の着用が推奨度C1(おこなってもよい)として加わった。紫外線や物理的な障害から頭皮を守るだけでなく、ウィッグ装着による見た目の満足度が心理的QOL(生活の質)を改善する効用が科学的に認められた形だ。

「心理的QOLの調査でもウィッグの装着で気持ちが前向きになり、自尊感などが高まることがわかっています。ウィッグで薄毛が進行することもありませんので活用されるといいでしょう」(同)

 自分に合う治療法は何か、皮膚科医に相談してみてはいかがだろうか。

心斎橋いぬい皮フ科院長
乾 重樹医師

(文/石川美香子)

※週刊朝日9月28日号