公開された樋田淳也容疑者の防犯カメラの映像=2018年5月撮影(大阪府警提供)
公開された樋田淳也容疑者の防犯カメラの映像=2018年5月撮影(大阪府警提供)
台風21号で木や車まで倒れた大阪市内(撮影/今西憲之)
台風21号で木や車まで倒れた大阪市内(撮影/今西憲之)

 大阪の富田林警察署から樋田淳也容疑者(30)が8月12日夜、逃走してからまもなく1カ月となる。大阪府警が3千人態勢で行方を追うさなか、大型の台風21号が関西地方を直撃。大停電を起こすなど甚大な被害が出て府警は右往左往。こんな調子で大捕物は果たしてできるのか?

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「自転車で警ら中、マスクしていたり、帽子を深くかぶっているとみな樋田に見えてしまう。台風の日にも、自転車で回っていて、樋田かと思って追いかけてよく見るとまったくの別人。そのうち、台風がますますひどくなり、緊急連絡がきて、強風で車が横転、その対応にあたれと今度は台風でてんやわんや。豪雨でずぶ濡れになるし、お盆休みもなしにやっているのに、樋田は今も捕まらずで……」

 こう肩を落としたのは、大阪府警の制服警官。

 8月12日夜、大阪府警富田林署から、樋田淳也容疑者が逃走して、間もなく1カ月。9月4日には台風21号が関西地方を直撃、関西空港をはじめ、甚大な被害を及ぼし、大阪府警はその対応にも追われて右往左往。

「樋田で大変なのに、そこへ台風が追い打ちのダブルパンチ。とんでもない状況です」(大阪府警幹部)

 大阪府内は台風の被害で、のべ102万軒以上が停電。また、木が折れたり、看板が吹き飛ばされ道路に散乱。その影響で、信号機があちこちで点灯しなくなり、出動に追われた。

「樋田を追いかけ、ちょっと署に戻って一息と思ったら午後から台風で、信号機が止まった、木が倒れて道をふさいでいるなど110番通報が殺到。交通整理していると、『おいこら、はよ樋田見つけやんかい』『樋田はどないなってん』とか市民からおしかりを受けますよ。一方、上司は『台風で混乱しているときに乗じて、樋田のような逃走犯は動くかもしれないから注意しろ』という。台風と樋田、二つとも追いかけろなんて……」

 台風で交通整理に駆り出された別の制服警官はため息をつく。

 大阪府警の幹部は苦渋の表情でこう言う。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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