筋力の程度から、自分に合った運動レベルを調べる方法もある。大江さんが勧めるのは、ロコモ度チェックの「立ち上がりテスト」。シニアでは「片足立ちテスト」も加えたほうがよい。

 立ち上がりテストは下肢の筋肉の程度をみる「体重支持指数」を参考に割り出したもの。両足で40センチの高さからしか立ち上がれなければ、すでに歩行障害が起きている可能性があるので、まずは筋力や柔軟性をつける運動から始めるのが望ましい。片足で40センチから立ち上がれれば、ジョギングもOKだ。

 相撲の四股などをヒントに考案した『相撲トレ』の著書がある大江さんは言う。

「『ロコモチャレンジ!推進協議会』のホームページにもありますが、筋力や柔軟性を高める方法はさまざま。どれを試してもいいですが、大事なのは、柔軟性や筋力を高めることを目的にしないこと。それによって旅行に行けるようになるとか、孫と遊べるようになるとか、そういう目標を立てることです」

 二つめのコンディションについては、運動前の体調チェックを欠かさないこと。運動による高齢者の身体機能を研究する筑波大学体育系名誉教授の田中喜代次さんが助言する。

「睡眠不足や疲れを感じるときや、今年のように気温が高いときは、運動をやめるか、控えめにするべきです。『運動は毎日続けるもの』という考え方はシニアには不要。『1週間で帳尻を合わせればいい』ぐらいに構えてください」

 薬のなかには足元がふらつくなどで転倒リスクを高めるものや、心拍を大幅に抑えるものなどがある。

「糖尿病だと低血糖の問題もあります。かかりつけ医がいる人は、運動を始める前に一度、伝えておくことが大事です」(田中さん)

 運動によって健康を害する高齢者があとを絶たないのはなぜか。その背景について、田中さんは「今は医学的なことばかり誇張されている」と言及する。

「まず、運動、スポーツに対する考え方がずれてきていることが、一番の問題だと思います。本来、運動というのは仲間と競ったり、楽しんだり、技術を習得したり、高めたりするための活動。それによって爽快感を覚えたり、気分転換がはかれたりするわけです」

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