梅毒の治療は、日本では抗菌薬の内服が中心になる(※写真はイメージ)
梅毒の治療は、日本では抗菌薬の内服が中心になる(※写真はイメージ)

 性感染症の一つである梅毒の増加が止まらない。年間報告数はこれまで長く1千人を割り込んでいたが、2011年から増加が始まり、15年以降は急増し、17年には6千人に迫るまで増えてきた。「性」に対して開放的になりやすいこの真夏に、梅毒の進み方、もしもの場合の治療の受け方のポイントなどを、性感染症の専門医に取材した。

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 梅毒は梅毒トレポネーマという細菌を病原菌とする感染症であり、病期は大きく四つに分けることができる。感染した性的な接触から約3週間はとくに症状があらわれない。その後、第1期の症状として、約3割の人に陰部や口の中、唇などに硬いしこりや、しこりがつぶれた潰瘍(かいよう)ができる。あしの付け根のリンパ節が腫れる場合もある。これらの症状は特に治療をしなくても1~3カ月ほどで自然に治まる。残りの約7割の人は、3週間を過ぎてもとくに症状があらわれないままである。

 プライベートケアクリニック東京・院長の尾上泰彦医師は、このような症状の乏しさが、梅毒の感染拡大の一因になっていると警告する。

「陰部などにしこりや潰瘍があっても痛くもかゆくもないため、多くの人が感染を疑うことがありません。症状が消えても、原因菌の活動は続いています。症状がなければ、当然、感染に気づきません。ただし、この時期の原因菌は感染力が強く、本人が気づかないうちに人にうつす危険性が高いのです」

 第1期から3カ月ほどすると、病原菌がからだじゅうに回り、第2期として主に皮膚症状が全身にあらわれてくる。ピンク色のバラの花びらのような発疹(バラ疹)がよく知られており、手のひらや足裏の発疹は梅毒の典型的な症状の一つとされる。肛門周囲などには灰白色の隆起した扁平コンジローマができることもある。尾上医師はこのほか、口の中(のどの入り口)にも注意を払うべきだという。

「第2期ではのどの粘膜に、羽を広げたチョウのような形をした白っぽい発疹(乳白斑)がみられることもあります。梅毒の患者さんのどこから梅毒トレポネーマが検出されたか、という調査で、ペニスから検出されたのは39%だったのに対して、口腔内は47%だった、という結果も出ているほど、のどには要注意です」

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潜伏期に入るのは…