実践規範では五つの対策が示された。そのうちの二つは広告に関するもので、フェイクニュースサイトへの広告掲載を阻止するためのシステム確立や、政治広告や政治・経済・社会問題に関するイシュー広告の透明性向上を約束している。後者は2016年の米大統領選挙で行われたような、政治広告を利用した世論操作や分断工作を防ぐための対策となる。

 虚偽情報対策の実践規範は、9月までにメディアや市民団体、ファクトチェック機関や学者らによるフォーラムからのフィードバックを受けて、9月末には正式決定される見込みだ。

 しかし、現時点ではフォーラムから、「漏れやあいまいな点が多く具体性に欠ける」との指摘も寄せられている。どこまで実効性あるものになるのか不透明な状況だ。

 欧州の取り組みが成功すれば、同じく虚偽情報に悩む米国や日本にも有用なものになるだろう。今後の展開に注目したい。

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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