■社会とのつながりを深め、積極的に人と交わる

 がんに罹患しても、自宅に引きこもらず外出し個人的にも社会とのつながりを深めるべきである。このためには、積極的に人と交わる必要が生じてくる。幸いなことに、長年大学で学生を指導してきたので教え子たちは多い。また大学外での活動も多かったので、マスコミ、省庁など各方面でさまざまな人との交流がある。

 がん治療が始まってから、基本的に夜の会合、外出は控えることにした。昼間は通常のように活動できるが、夜になると抗がん剤投与のためにやはり疲労がたまり、しんどくなるので家でゆっくりとすることにした。初めは病気の様子を見ていた友人たちは、私が昼間元気に外出できると知り次第に面会の誘いがかかるようになってきた。そうなるとどこで、昼食を一緒にということになることが多い。私がひとりのこともあるし、また家内も同伴ということもあるが、この会食でいつも楽しい時間を過ごしている。

 一橋大学独特のゼミナール制度のもとで、公私にわたり接触してきた教え子たちは280人ほどにのぼり、三石会と称するOB会を作り交流を続けている。がんが発覚してからは特にわれわれ夫婦のことを心配してか、卒業年次ごとに集まり昼食会を企画してくれる。いつもとは異なり、北海道、長野、山梨、関西など遠方からわざわざ来てくれるゼミの教え子も多い。病気が病気だけに、皆心配してくれているようだ。

 その他、現役時代に一緒に仕事をした財務省の仲間、当時は緊張関係にあったマスコミの皆さん、いろんな出会いで知り合った知人、そして趣味のスキー仲間など、さまざまなグループとの交流ががんに罹患した後も、続いている。毎月2~3回ぐらい、どこかのグループが私並びに時にはわれわれ夫婦に昼食時に声をかけてくれ、皆で食事を楽しんでいる。

 談論風発、時間も忘れ思い出話に花を咲かせている。知人と会う時には、ご夫妻と私たち夫婦の4人で席を設けることもしばしばである。このような外出そして会食を通じて、私の免疫力は大いに刺激され治療上よい結果を生んでいるはずである。

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人生の終わりを感じる