大センセイ、気安く謝罪の言葉を口にしたが、ここでもし妻太郎が、

「昨日も言ったよね」

 と一歩踏み込んでくると、展開が変わってくるだろう。

「そうだっけ?」
「ほら、ちゃんと聞いてなかったんだ」
「ちゃんと聞いてたよ。き、い、て、ま、し、た」
「何それ、ぜんぜん悪いと思ってないじゃない」
「うるさいなぁ、タオルの端っこなんてどうだっていいだろう!」

 こうしてみると、大センセイ、自分が悪かったなんて微塵も思っちゃいないことがよくわかる。許しを期待しないどころか、その場を取り繕えればそれでよかったのだ。

 だから、わが家のタオルの端っこはいまだにズレ続けている……。

 あれは、小学校五年生のときのことであった。担任は岡田先生とおっしゃった。「甘ったれんじゃねぇ」が口癖のとても厳しい先生だったが、叱り方に道理があって、大センセイ、岡田先生が大好きであった。

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