「お客が入らないと店が判断すれば3、4時間で早上げされる。逆にお客が多い時は、朝まで8時間以上休憩なしで働いても残業手当も出ませんでした。もっとひどいケースでは『税金30%』とかわけのわからない項目で差し引かれることが増えています」

 キャバクラ嬢に飲酒を強要して、酔い潰して喜ぶ客も少なくない。翌日、体調を崩して店を休めば、無断欠勤扱いにして罰金を取られることもある。

「指名や同伴のノルマを課し、達成できなければ数万円単位で罰金を課すという店もある。実際に手取りで20万円以上稼ぐのは相当大変です。そんな状況に置かれながら最近は親がリストラに遭って、親や兄弟のために生活費を稼ぐという人も多い」(布施さん)

 それでいて経営者たちはヴィトンのカバンやシャネルのサングラスが定番で、高級スーツに身を包む。ユニオン側が「女性を食い物にして絶対に許さない!」といきり立っても、経営のトップは隠れていて杳として姿を見せない。新入りのボーイを風営法上の店舗責任者にさせていることさえある。このため、店側に団体交渉を申し入れても警告書を送ってもナシの礫。いきおい、店まで押しかけて労働争議に突入せざるを得なくなる。

 一般の労働組合も会社前まで出向いて情宣活動を行うことも少なくない。だが、「夜の世界に昼間のルールは通用しない」とばかりに居直る店がほとんどなので、当然のことながら、実力行使の頻度は高まる。布施さんは「賃金を払わないまま働かせるような悪質店だったら、すぐに辞めるべき」と訴える。

 それだけに、今回の警察の捜査に対して、ユニオン側は「捜査の名を借りた組合活動への妨害、嫌がらせ」と抗議姿勢を強める。警視庁に聞くと、「個別の事案は回答を差し控えさせて頂きます」との回答だ。

 キャバクラ・ユニオンは警察のターゲットにされたのだろうか。非正規労働問題に詳しいエッセイストの平井玄さんがこう指摘する。

「経営側が団体交渉に応じなければ訴訟手段に訴える労組が増えているなかで、キャバクラ・ユニオンは行動的な現場闘争路線を敷いています。安倍政権の『働き方改革』で頻発が予想される労使紛争をにらんで、先鋭的な組合を叩き潰すという意図が見えてきます」

 働く側からそんな見方をされる限り、政府のうたう“女性活躍““働き方改革“の言葉はむなしく響く。(本誌・亀井洋志)

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