そこで、国民栄誉賞まで受けた伊調が栄氏からパワハラに遭っていたことは、栄氏を追い落とす格好の材料になったわけだ。

「伊調を助けよう、というより、栄を倒せ、のほうが強かったはずです。その本懐を遂げた今、練習場の提供をはじめ、伊調のフォローに回るはずです」(同前)

 ベテラン記者は、声をひそめてこう言った。

「レスリング界は狭い世界で、メディア側も含め、自由にモノが言えない。ただ、栄さんを切っただけで終わり、は許されない。伊調のリスタートもフォローしないと、アスリートファーストになっていない。協会なり、彼女の現在の指導者なり、当人に現状報告の場を作ってあげないと」

 伊調の所属先ALSOKの監督は「何も決まっていない」と語った。

 東京五輪に向けた決意を、伊調の口からぜひ聞きたいものだ。(岸本貞司)

週刊朝日  2018年7月27日号