春風亭一之輔 ある“日本代表”との思い出を語る (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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春風亭一之輔 ある“日本代表”との思い出を語る

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

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春風亭一之輔週刊朝日#春風亭一之輔
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です

ある“日本代表”との思い出

ある“日本代表”との思い出

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「日本代表」。

*  *  *
 太田家元九郎という津軽三味線の師匠がいた。寄席では三味線漫談の色物さん。元海上自衛官・大柄・角刈り・赤ら顔・黒紋付きに袴姿で津軽訛り。決め台詞は「断るこどがでぎねぇんだ。な~にしろ『にっぽんだいひょう』だからねぇ~!」。

[国際旅行博覧会(ホントにあるのか?)に『日本代表』として招かれ、各国の代表から「我が国の曲を津軽三味線で弾いてくれないか?」と頼まれた]……というネタふりからの、さきほどの決め台詞。「アリラン」「パイプライン」「コンドルは飛んでいく」「ラ・クンパルシータ」「イエスタデイ」(イエスタデイだけ、ちょっとズル)という曲を太棹三味線で華麗に弾きわけて、トリネタは「津軽じょんがら節」。満場拍手喝采。ポーカーフェイスで一礼、袖に引っ込む形が実にかっこいい。

 そんな元九郎師匠、たいてい酔っぱらっていた。素面のときも酔っぱらってるように見える。境目が不明瞭。前座が「おはようございます!」と挨拶をすると、師匠は「ねぃ~ん」か「おわぃ~ん」か「ぶえぃ~ん」と謎の擬音で返事をする。下唇を突き出して、右手の親指・人さし指・中指を下から緩やかに差し出す。何時なんどきでもご機嫌な挨拶に和む楽屋。

 高座を下りると大抵、「これから一杯どうだい? 軽くねぃ~ん!」「いいんですか?」「お約束よぅ~! ねぃ~ん!」。何が『お約束』なのかはわからないが、後輩は誘われるがままに付いていく。陽気な酒。分け隔てなく誰とでも楽しく飲む師匠。でも『軽く』ではない。まぁ、寄席芸人の言う『軽く』一杯は『気の済むまでとことん』を意味するのだ。

 浅草の寄席がはねると、すしや通りの末廣寿司でよく飲んでいた。仕事を終えた前座やお囃子さんが前を通り掛かると「寄ってかない~ん!」と店の中から元九郎師匠が手招きをしている。終電まで飲ませてもらい、「ねぃ~ん! また明日~!」となるが、師匠は「お約束よぉ~ん!」と河岸を変えて飲み歩く。


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