プロゴルファーの丸山茂樹氏は、全米オープン選手権で起きたルール違反について言及する。
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テレビのお仕事で「全米オープン選手権」(6月14~17日、米ニューヨーク州ロングアイランドのシネコックヒルズGC)へ行って参りました。アメリカのブルックス・ケプカ(28)が昨年に続く連覇を果たしましたが、今回の全米オープンはフィル・ミケルソン(48)のよくない話題で持ちきりでしたねえ。
ご存じの方も多いでしょうけど、少々状況の説明をさせてもらいます。フィルは3日目の13番パー4で約3メートルの下りのボギーパットを打ちました。カップを通りすぎたボールが、加速します。すると彼は小走りでボールを追い越して、まだ動いているのにカップへ向けて打ち返したんです。フィルはこれで2罰打を受け、このホールは「10」でした。
違反をしなければ、ボールは傾斜を下ってグリーンから出ちゃってたでしょうね。彼はアテスト後、「2罰打を受けると分かってやった。だらだら続けるより、罰があっても気持ちを切り替えるべきだと思った。早く次のホールへ行きたかったんだ」と話したそうです。
8番から11番までは4連続ボギーでしたし、「早く次へ」という気持ちは分からなくはないですけど、あれはダメ。ゴルフでは一番しちゃいけないことです。ルール上、ほかの違反と同じ罰だとしても、やっていいことと悪いことがありますから。
あれをやって、「ふざけるなUSGA(全米ゴルフ協会)」って言うんなら、まだよかったですよ。「こんなピンの位置おかしい」とか、「グリーンの硬さと速さにピンの位置が合ってない」とか文句をつけるんなら。それを「ルールを上手に使っただけ」みたいなことを言うなんて、フィルらしくなかったですね。僕は長年彼といますけど、クレバーな人ですから。
あれが日本のゴルフ場で起こってたら、もっと大騒ぎになったでしょうね。でもアメリカでは「あんなのUSGAが悪い」「ゴルフ場が悪い」って言う人がいっぱいいますから。ファンの中にもね。だから翌日、スタートホールのティーグラウンドに行っても彼にブーイングの一つもなかったそうですよ。逆に大拍手で。そこは日本と大きく違うところですね。