ハメス・ロドリゲス(コロンビア)/26歳。前回大会からスーパーの仲間入り。日本のCMにも出演 (c)朝日新聞社
ハメス・ロドリゲス(コロンビア)/26歳。前回大会からスーパーの仲間入り。日本のCMにも出演 (c)朝日新聞社

 4年に1度の祭典、サッカーW杯のロシア大会が6月14日に開幕した。日本代表の戦いぶりも気になるが、世界中から集まったスーパースターの競演も大きな楽しみの一つだ。今回でラストW杯と言われている名選手もいるので、お見逃しなく!

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 ロシア大会には32カ国736人の選手が参加するが、なかでも最大の注目は人気、実力で群を抜くアルゼンチン代表FWリオネル・メッシとポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドの2大スター。2人がどれくらいすごいかといえば、サッカー界では年に1度、バロンドールというその年の世界最優秀選手を決める賞があるのだが、この10年間は彼らが仲良く5度ずつ受賞し、独占しているのだ。

 メッシはバルセロナ、C・ロナウドはレアル・マドリードと2人はスペインのライバルクラブに所属しているが、興味深いのはプレースタイルはもちろん、性格も対照的だということ。テクニックに優れ、常に淡々とゴールを目指す「柔」のメッシに対し、「剛」のC・ロナウドはスピードやパワーなどフィジカルを武器にし、まるでエゴの塊のようにギラギラ感全開でプレーする。共通しているのは、多くのゴールを挙げてきたことだけである。

 バルセロナでは欲しいタイトルをすべて手に入れてきたメッシだが、アルゼンチン代表では同じような活躍ができないと厳しい批判にさらされてきた過去もある。C・ロナウドはユーロ2016を制し代表初タイトルを獲得したが、ロシアW杯でも自分が世界最高の選手だと誇示したいと意欲に満ちているはずだ。ただ、そんな2人もキャリアの終盤を迎えつつあり、メッシは今回が最後のW杯と示唆。C・ロナウドにしてもロシア大会が最後になる可能性は高いだけに、2人の代表での姿はこれが見納めになるかもしれない。

 日本と1次リーグで対戦する相手にも、スター選手はそろっている。初戦で顔を合わすコロンビア代表のMFハメス・ロドリゲスは前回大会の得点王で、ウルグアイ戦で決めた体を反転させながらのボレーシュートは大会ベストゴールにも選ばれたほど。第2戦の相手、セネガル代表のFWサディオ・マネは爆発的な加速力を武器にし、一瞬で相手を置き去りにするプレーは、ファウルなしでは止められそうにない迫力がある。スピードに乗せてしまったら最後で、W杯開幕直前には欧州最高クラブのレアル・マドリードへの移籍話も浮上するなど、いま脂がのっている選手の一人ともいえる。ポーランド代表のエースFWロベルト・レバンドフスキも、厳しい欧州予選で最多の16ゴールをマークした点取り屋で、右足、左足、頭と、どこからでも点が取れるのが魅力。日本代表がどこまで戦えるかは、彼らをどう抑えられるかにかかっているといえそうだ。

 ロシアW杯で一気に飛躍しそうなのがエジプト代表FWモハメド・サラーとフランス代表FWキリアン・ムバッペだ。サラーは昨夏にローマからリバプールに移籍すると、その才能が一気に開花。プレミアリーグで32点を挙げて得点王を獲得しただけでなく四つの個人賞を総なめに。スピードに乗ったドリブル突破からの左足のシュートは迫力満点。5月のチャンピオンズリーグ決勝で負傷しW杯出場が心配されたが、無事にメンバー入りし世界中を一安心させた。ムバッペは弱冠19歳にして、かつての同国の英雄ティエリ・アンリと比較されることも多いが、若さゆえの勢いだけではない完成されたプレーぶりが光る。単独突破はもちろん、周囲を生かすプレーにも長け、優勝候補の一角フランスの命運を握る選手ともいえる。

 サッカー王国ブラジルの国民の期待を一身に背負うのがFWネイマールだ。4年前の母国での大会は、ケガで途中離脱。ブラジルが準決勝でドイツに1-7と無残に敗れる姿を外から見るしかなかったが、一回り成長してW杯に戻ってきた。得意の左サイドから巧みな足技を駆使しての仕掛けは、まさにワールドクラス。ブラジルの浮き沈みは、この男の活躍次第と言っていい。テクニックとキックの精度なら、ベルギー代表のMFケビン・デブライネも必見。派手さはないが、長短織り交ぜたキックでゲームをコントロールし、右足から放たれる高精度のキックは息をのむほどである。

 最後に紹介したいのが、W杯後の7月にはJリーグのヴィッセル神戸への加入が決まっているMFアンドレス・イニエスタ。もはや大ベテランの域に達したが、2、3人に囲まれても苦にしない圧巻のキープ力は健在で、ロシア大会でもポゼッションサッカーを掲げるスペイン代表の中核を担う。何気ないタッチ一つで相手の裏を取り、スルスルと敵陣に入り込む術は、まさに一級品。メッシやC・ロナウドと同じく、今大会が最後の大舞台となる可能性もあるだけに、そのプレーから目が離せない。(スポーツライター・栗原正夫)

※週刊朝日 2018年6月29日号