「認知症予防の日」制定記念式典で講演する認知症予防学会・理事長の浦上克哉医師
「認知症予防の日」制定記念式典で講演する認知症予防学会・理事長の浦上克哉医師

「認知症は他人事」「自分はまだ若いから関係ない」と思っている人に、ぜひ知ってほしい記念日が新たにできた。6月14日が「認知症予防の日」に制定された。アルツハイマー型認知症を発見したアロイス・アルツハイマー博士の誕生日であることから、日本認知症予防学会が登録した。6月10日に開催された記念日の制定式典から、認知症予防の新常識を紹介する。

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 今年4月に82歳で亡くなった女優の朝丘雪路さんは、認知症を患っていたことがわかった。芸能人のニュースや認知症患者の自動車運転事故などを耳にし、「認知症になるのは怖い」と感じている人は少なくないだろう。現在65歳以上の日本人のうち、約4人に1人が認知症かその予備軍だ。この割合はさらに増え、厚生労働省の発表によると2025年には5人に1人が認知症になると推測されている。

 認知症は、現状では根本的な治療法がない。そのため発症の予防と、発症してからも進行を防ぐことが重要だ。一昔前までは「予防する方法はない」と言われていたが近年、予防に効果があるデータや研究が増えてきた。そんな中、予防研究に取り組む学会として、日本認知症予防学会が2011年に設立された。

「認知症って予防できるの?」。同学会の理事長で鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座教授の浦上克哉医師は、市民向けの講演会を開くとこんな声をよく耳にするという。浦上医師は、「まだまだ一般には認知症についての正しい知識が伝わっていないと実感しています」と話す。同学会は認知症予防の啓発活動を広げるために今年、6月14日を「認知症予防の日」に制定した。記念日制定を機会に、各地で予防を啓発するイベントを開催していく予定だ。

 ただ認知症の予防法には、まだ科学的根拠(エビデンス)が乏しいのも現状だ。同学会では「エビデンス創出委員会」を17年から始め、客観的な効果の実証を目指している。

■楽器の演奏やサプリメントの予防効果が実証された

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