林:今井さんはどうなんですか。ロンドンでアーティストとしての腕を磨くとか?

今井:私はロンドンでは生活者ですね。一つひとつがシステマチックな東京からロンドンに行くと、昭和に戻った感じなんです。鍛えられますね。最先端の国なのに、そのへんのバランスの悪さがおもしろいです。

林:へー、意外です。

今井:業者とのやり取りとか、もう信じられないですよ(笑)。みんな「それでしゃべれるようになる!」って言うんです。私も本当に自分で文句が言えるようになりたい! クレームを言うとき、誰かを通してじゃなくて、この憤懣やるかたない気持ちをそのまま伝えたいって。

林:そうなんですね。今度のアルバム(「Sky」)は、何年ぶりになるんですか。

今井:オリジナルは3年ぶりなんですって。「なんですって」って、ひとごとみたいですけど(笑)。

林:(リリース文を手にして)「『PRIDE』から20年。あの日『南の一つ星を見上げて誓った』私は、今も、ここにいる」。「PRIDE」、カラオケでみんなよく歌いますよ。

今井:布袋さんは音楽家だから、メロディーに歌詞をつけるというスタイルなんです。歌詞だけ見るとシンプルでも、歌うとすごく気持ちが乗る言葉を選ぶんですよね。

林:なるほど。歌詞もメロディーも素晴らしいし、自分の意志を持って人を愛するキリッとした女性像が素敵ですよね。

今井:この歌をもらったとき私は30代半ばで、自分のキャリアについてもいろいろ考えて、「どんなことがあっても真っ直ぐ前を向いて歩いていこう」と覚悟を決めたときだったんです。その気持ちが歌詞に書かれていて、「自分じゃないのに、どうしてわかるんだろう?」という感じでしたね。「私は今」って宣言するみたいな歌って、かつてなかったと思うので、とても衝撃的でした。

林:私、このところ毎日このアルバムを聴いてるんですが、今井さんの透明な歌声、あのころのままですよ。「この声、待ってました」って、ファンの方みんな思うんじゃないかな。

今井:そう言ってくださるとありがたいですが、千本ノックでできたアルバムです(笑)。歌うことが久しぶりだったからかエンジンかけてもすぐには体が全開にならなかったです。何度も何度も歌わせてもらって、やっと体が開いてきて、「よし、ここから歌うぞ」という感じでしたね。

林:そうなんですか。すごく軽々と歌ってるように聞こえましたよ。

今井:「機織りの部屋はのぞかないで」という感じでした(笑)。

(構成/本誌・野村美絵)

週刊朝日 2018年6月1日号より抜粋