「家族葬が中心になりつつあり、葬儀代は縮小傾向です。60万~80万円あれば葬儀は出せます」

 内藤さんも、

「ご自身の判断しだいですが、葬儀代と思ってとっておいていいと思います。ただし、金科玉条に『葬儀代』と固定してしまう必要はありません。気持ちは変わるものです。何か別な使い道が出てくれば、柔軟に考えてください」

【論点2】夫婦の医療保険をどうするか?

 十分な貯蓄があれば保険はいらない──保険の大原則で、誰もが正しさを認めるものの、「貯蓄」の捉え方によっては結論がまるっきり違ってくる。医療保険が、その一つだ。

 内藤さんは貯蓄重視で、「リタイアしたら基本的に保険はいらない」を持論とする。

「貯蓄のない若い世代が保険に頼るのは致し方ありませんが、時の経過と共に貯蓄が積み上がっていって自分で準備できるようになると、保険に頼る必要性は薄れてきます。加えて国の健康保険には、高額の医療費がかかった場合は個人には一定金額以上の負担はかからないとする『高額療養費』の制度があります。私は医療費に使える貯蓄が夫婦で『150万~200万円』程度あれば、医療保険はいらないと言い続けています」

 貯蓄のいいところは、使い道が限定されない点にあるとする。保険だと入院・手術などすべては「支払い要件」に左右される。自由度の高い貯蓄を保険がわりに使おうという発想だ。

 したがって、夫の医療特約は即、外してもOK。妻も同様だが、

「不安なら、いろいろな特約を外して保険料を安くして残す選択もあり得ます」(内藤さん)

 一方、あとの二人は、貯蓄の将来性を危ぶむところから出発する。竹下さんが、

「今は100万円貯蓄があっても、10年後にそのままあるかどうかはわかりません。人生、意外な出費増には事欠きません」

 と言えば、鬼塚さんも、

介護が始まると湯水のようにお金が出ていきます。介護施設の入所者など私が関わった数百人で見ると、介護に備えて1人2千万円準備していても十分とは言えません」

 と話す。貯蓄自体が「不十分」とするわけだ。

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