また、自宅で火事を起こして類焼を招いた場合、「重過失」なら賠償責任が発生するが、

「個人賠償責任保険に入っていれば、重過失でも保険金が支払われます。高齢になると何があるかわからないので、備えましょう」(内藤さん)

 火災保険や自動車保険に入っている場合は、すでに特約としてついている場合がある。新たに入る場合も、保険金額1億円で年間保険料は数千円だ。


 以上、50代からの保険見直しの主要論点を見てきた。やはり、「医療」「がん」「介護」といった高齢になるほどリスクが高くなる分野で、不安とどう付き合うかがポイントになる。先に触れたように「あちら立てれば……」なのだが、実は答えは皆さんの家計の中にある。保険の見直しはそれ単独では行えず、家計全体の見直しと必ずセットで行う必要があるからだ。

 貯蓄額と月々の収入と支出、それも現状とリタイア後の予想まで含めて把握し、どれだけのお金を保険に回せるかを詳細に見ていく。このため、個々の家計で結果はまったく違ってくる。おそらく大半の家庭は、すべての不安を保険で賄うことなどできないだろう。となると、保険で備える場合は自分で選択するしかない。保険に回せるお金の範囲内で、優先順位をつけるのだ。

 家計の「保険力」を知り、自分はどの不安が強いのかを把握する──FPなどに相談して、そんなシミュレーションをしておけば、予想される保険会社の「攻勢」にも冷静に対処できるのではないか。(本誌・首藤由之)

週刊朝日 2018年5月18日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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