内藤さんは、現在の契約の継続でOK、無理に入り直す必要まではないとする。

「もっと昔のがん保険では診断給付金がないものもあるのですが、診断給付金は今からでも付加することができます。古い保険は保険料が安いので、そこを生かして見直すのも手です。がんはお金がかかる可能性のある病気ですが、考えすぎるとキリがありません。『ほどほど』くらいがいいと思います」

 一方、鬼塚さんは、将来の治療がどうなるかを見据えた見直しの余地があるとする。

「最先端の研究をウォッチしていますが、これからは健康保険が利かない自由診療が確実に増えます。画期的な治療法が開発されても、標準治療になるまでは長い年月がかかるからです。良い治療法があるのに、お金の面で受けられないとしたら残念。自由診療に対応した保険も出てきているので、見直し対象になるでしょう」

 医療保険と同じく不安が出発点だが、こちらは「どこまで求めるか」で「欲望」との付き合い方が焦点になる。保険料と家計の関係は、医療保険のときとまったく同じである。

【論点4】そのほかに必要な保険はあるか?

 高齢社会の進展につれ、新たに対応しなければならないリスクも出てきている。

 内藤さんと竹下さんは、今やシニア、あるいはシニアを抱える世帯にとっては「個人賠償責任保険」が必須と強調する。他人の物をこわしたり、他人にケガをさせてしまったりして法律上の損害賠償責任が発生した場合に保険金が支払われる保険だ。

 2007年、認知症で徘徊中の91歳の男性が、列車にはねられて死亡した事故をめぐり、JR東海が家族に損害賠償を求めた訴訟があった。最高裁でようやく家族には責任は問えないとなったが、一・二審では家族に損害賠償を認める判決が出された。

「個人賠償責任保険なら、この場合には保険金受け取りが可能でした。JRの事故では別居の長男も訴えられましたが、大手損保会社が補償範囲を広げる改定を行ったりしていて、入りやすくなりました」(竹下さん)

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