関東財務局に提出された報告書によると、レノなど旧村上ファンド系は株の保有目的を「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」としている。しかも、新明和は資金が潤沢。18年3月期で売上高2073億円、営業利益は106億円に上る。

 天野氏が続ける。

「村上氏サイドは、状況次第で役員を送り込むことを提案する可能性も捨て切れません。現時点で新明和は大きな設備投資をする必要性は見当たらず、資産の状況から、キャッシュリッチな状態です。そのうえで、株主還元を求めるのではないかという期待値が株価に反映しているのです」

 フジサンケイグループのニッポン放送株や阪神電鉄株などを大量に買い占めて話題になった村上氏は、経営陣に対して株主価値の向上や経営の効率化を迫るなど“改革者”の顔を持つ一方、06年にはニッポン放送株をめぐってインサイダー取引をしていたとして逮捕される。11年に懲役2年執行猶予3年の有罪判決が確定。以来、表舞台から身を引いていた。だが、数年前から旧村上ファンドは川崎汽船、東芝、ヤマダ電機などの株を次々と大量購入。筆頭株主になっている。完全復活を果たしたと兜町では見られている。

 新明和の筆頭株主は17年3月末では、三信(オフィス賃貸業)の9.29%だったが、旧村上ファンド系のレノが11.15%で上回った。6月末には株主総会を迎えることもあり、新明和の経営陣は戦々恐々としているという。先の防衛省関係者によれば、新明和サイドが最も懸念していることは、株を中国系の企業などに売却されることだという。

 というのも中国は現在、US−2と酷似した水陸両用飛行艇「AG−600」を完成させているからだ。全長はUS−2より4メートル長い37メートルで世界最大となる。最高速度や航続距離もほぼ匹敵。定員は50人にも及ぶ仕様だ。しかも、US−2よりも価格は安いという。

「AG−600は昨年12月に初飛行に成功しましたが、まだ陸上での離着陸という段階です。US−2の波高3メートルの荒海でも着水できる艇底の設計技術は、秘伝中の秘伝です。中国としては、何としても得たい情報のはず」(防衛省関係者)

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