航空機に詳しい軍事ジャーナリストの竹内修氏もこう話す。

「中国の航空技術はこの20年くらいで急速に伸びています。中国にとって飛行艇は、南シナ海の南沙諸島海域の人工島周辺に飛ばすには打ってつけです。武装していない飛行艇ならば、東南アジア諸国との摩擦を避けられる一方で、高い航空技術を見せつけるプレゼンスにもなるからです」

 新明和は外国人持ち株比率が約45%と高いことも、狙いを定めた理由の一つだと見られている。持ちつ持たれつの国内の株主よりも、外資のほうが共闘を組みやすいということだろう。村上氏の自著『生涯投資家』でも、東京スタイルの株主総会で外国人投資家の賛同を得られる株主提案を行い、日本初のプロキシーファイト(議決権争奪戦)を仕掛けるくだりが出てくる。

 レノに新明和株取得の理由について質問書を送ったが、「取材は全般的にお断りしている」。一方、新明和は「投資家様との個別の折衝については対外的に開示しておりません」(社長室)との回答だった。

 前出の天野氏は「村上氏が国を敵に回すようなビジネスをするとは思えない」と指摘する。

 とはいえ、安倍政権の武器輸出は、すでにオーストラリアへの潜水艦の受注競争でフランスに敗れている。このうえ飛行艇も暗礁に乗り上げれば、弱り目に祟り目となる。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日2018年5月18日号