山が崩落した現場=4月11日、大分県中津市耶馬渓町(c)朝日新聞社
山が崩落した現場=4月11日、大分県中津市耶馬渓町(c)朝日新聞社

 自宅の裏山が、ある日雨も降っていないのにいきなり崩落する。こんな恐ろしいことが、大分県中津市耶馬渓(やばけい)町で4月11日未明に起きた。

 裏山が約200メートルにわたって崩落し、4世帯6人の安否が不明になった。13日時点で2人の死亡が確認され、残る4人の捜索が続いている。

 雨が降っていないのに崩壊がなぜ起きたのか。国土交通省の調査団などによると、原因は「岩盤風化」とみられている。現場は溶結凝灰岩や安山岩などの岩石の上に、土砂の層が載っている構造だった。基礎となる地下の岩石が風化し強度が低くなり、何らかのきっかけによって、上部の土砂とともに一気に崩れた。

 現場で調査した九州大大学院の三谷泰浩教授(岩盤工学)は雨がなくても土砂崩れは起きると指摘する。

「岩盤に弱い面があると、経年劣化によってそこから大きく崩壊することがある。今回は地下水の影響も大きいとは考えにくく、割れ目の風化が進んでいく過程で、地すべりを起こした可能性がある」

 何がきっかけになるのかは、はっきりしていない。過去の地震や大雨の影響が時間差で現れることもある。小さな石が落ちてきたり、木が傾いたりと「前兆現象」もあり得るが、それを見極めるのは難しい。仮に目に見えるような変化があっても、最終的な崩壊まで時間が短いことが多い。

 今回と同じような構造の地形は珍しくない。発生頻度は低くても、岩盤風化のリスクは各地にあるのだ。三谷教授は警鐘を鳴らす。

「風化して割れ目ができているかどうかは、住民にはわからない。行政は定期的に各地の斜面を点検し、崩壊のリスクを伝えるべきだ。その上で防災教育もして、住民が自主的に備える体制が求められる」

 斜面の近くに住む人は、「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)や、その中でも大きな被害の恐れがある「土砂災害特別警戒区域」(レッドゾーン)に指定されていないかどうかを確認しておこう。今回の耶馬渓町の被災地も指定されていた。国交省によると2月末で、イエローゾーンは約51万カ所、レッドゾーンはそのうち約36万カ所に上る。(本誌・多田敏男)

週刊朝日 2018年4月27日号