「つまり夫は、離婚までが長引くほど、経済的負担が増えることになります。だから別居したら、なるべく早く合意を取り付けられるように動くことも大事です」(中里弁護士)

(3)家やマンションは解決金と思い諦める

 離婚方法は現在、夫婦の話し合いによる離婚合意に基づく「協議離婚」が全体の9割を占める。ただし、妻の合意はそう簡単に得られるものではない。

「一般的に婚姻(同居)期間が長いほど、離婚成立までの別居期間も長い。婚姻期間20年の場合、離婚の合意を得るまでには5年ほどかかると思っておいたほうが良いでしょう」(中里弁護士)

 中里弁護士は、妻に「住む場所」を渡すことが離婚を早める近道になるケースが多いと指摘する。

「子どもがすでに独立している女性の場合、預貯金などの折半に加え、家がもらえるなら応じるというケースが多い。つまり家を“解決費用”と考え、差し出したほうが、離婚が早く成立しやすい。生活費を払い続ける負担を考えると、一日でも早く合意に持っていく流れを考えたほうが得策です」

(4)走りだしたらブレてはダメ

 妻がかわいそう、だましているようで心苦しいなど合意形成の過程で躊躇(ちゅうちょ)してはいけない。前出の岡野さんは、「考えるべきは、自分にとって少しでも有利な条件でいかに早く離婚するか。交渉ですからブレてはダメ。忖度していてはいつまでも離婚できません」と強調する。そのうえで、「妻が得になる論理」をいかに作れるかが、離婚を早める鍵になると話す。

「うそでもいいから、妻が納得する理由が必要。例えば、“俺の夢”作戦。『退職金で海外で友人と起業する』など、リスクの高い夢を妻に語り、『資金が尽きる前にこれだけは渡すから、今のうちに別れたほうがお前のためだ』と話す。救いようのないバカな夫を演じるのも知恵の一つです」

(5)離婚を切り出すときにお金の話はしない

 なるべく円満に合意に持っていくには、離婚の意思と金銭の話とは区別して話すこともポイントだ。

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