清水宏保(しみず・ひろやす)/1974年生まれ。長野オリンピック・スピードスケート500メートル金メダリスト。今年の平昌オリンピックでは名解説者ぶりが話題に。著書に『人生の金メダリストになる「準備力」』等。(c)S.Yamagishi
清水宏保(しみず・ひろやす)/1974年生まれ。長野オリンピック・スピードスケート500メートル金メダリスト。今年の平昌オリンピックでは名解説者ぶりが話題に。著書に『人生の金メダリストになる「準備力」』等。(c)S.Yamagishi
これで明日から人生変わるかも(イラスト/ヒロヒロスタジオ・斎藤ひろこ)
これで明日から人生変わるかも(イラスト/ヒロヒロスタジオ・斎藤ひろこ)
緊張しているときこそ、ゆっくり行動を(イラスト/ヒロヒロスタジオ・斎藤ひろこ)
緊張しているときこそ、ゆっくり行動を(イラスト/ヒロヒロスタジオ・斎藤ひろこ)
ネガティブな発想はすぐに吐き出すこと(イラスト/ヒロヒロスタジオ・斎藤ひろこ)
ネガティブな発想はすぐに吐き出すこと(イラスト/ヒロヒロスタジオ・斎藤ひろこ)

 千葉県在住の根岸えりさん(仮名・46歳)は、人前で話すのがとても苦手だ。子どもの小学校では毎年、新しい学年がスタートしたときに保護者の集まりの席でクラス委員や校外委員を決める。

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「すぐ近くに住んでいるママに『子どもが6年生になる前に、委員をやっておいたほうがラクだよ。今年一緒にやろうよ』と誘われています。私は10人くらいの人の前で話すだけでも緊張して、普通に話せなくなる人間なので……考えるだけでも憂鬱です」

 埼玉県在住の松丸紘一さん(仮名・75歳)は18歳になる孫のことが心配だ。子どものときから成績がよく、進学に関しては何の心配もいらない子だった。しかし今年のセンター試験でどうやら大失敗をしてしまったらしい。浪人を決めた孫が、仲の良い紘一さんにボソッと呟いた。「いやあ一瞬、ちょっとミスしたかなあと思ったら、僕、試験に集中できなくなっちゃってさ」。他人が問題を解いていく物音ばかりが気になり、焦り、本人史上「最悪のデキ」となったそうだ。

「孫はこれから1年予備校に通います。でも、来年も同じようなことにならない保証はないですからねえ」

 東京都在住の滝内藍さん(仮名・38歳)は、メーカーの広報部で働いている。1年前に自社の新製品の発表会で司会をつとめたのだが、そのとき、あろうことか会の最後の最後に、咳が突如出始め、止まらなくなってしまった。「やはり気持ちが張りつめていたのでしょうか。口の中が異常に乾き、のどが痛くなり、急に咳が出始めて。そんな失敗をするとは思ってもいなかったので、落ち込みました」

 晴れの舞台(!?)の場はさまざまだが、いわゆる“本番”と言われる場所でひるまずにベストパフォーマンスを発揮するにはどうしたらよいのだろう。

「一番いいのは普段から緊張慣れ、プレッシャー慣れする環境に自分を置くことですね」と清水宏保さん。清水さんは1998年の長野オリンピックのスピードスケート500メートルでは金メダルを、1000メートルでは銅メダルを獲得。また2002年のソルトレークシティーオリンピックでは500メートルで銀メダルを獲得している。

「僕ももともとはプレッシャーに弱い人間でした。周囲からは競技に向いていないと言われていましたし、子どものときから喘息に悩まされてきました。試合前日には眠れませんし、レース前には吐き気をもよおしてしまうこともあったんです。でも大事なときに勝てない選手は『心が弱い』と言われるだけですからね。プレッシャーに向き合う方法は、自分で徐々に開発しました」

 具体的にはどんなことをするのだろう。

「まず、人間は緊張する生き物なのだということを常に認識しておくことです。どんな場面でも緊張しない、などと自分を過信しないこと。『本番』を軽く見てはいけないのです」

 そして普段の練習から緊張に向き合う。

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